物語の始まり
目を開けると教室にいた。
今は休み時間のようでザワザワと話し声や足音がなっている。
時計を見ると13を指している。
今は昼休みか。
少し空いた窓から風が吹き込んでくる。
ふわっと隣の席の髪が揺れるのを横目で見ていた。
教室の入口で人気者が大声を上げている。
なにか喋っていたがあまり思い出せない。
廊下ではボールをかかげグラウンドを目指す人達。
きっと教室の後ろではヒソヒソと恋バナでもしているんだろう。
こんなありふれた日常で私は何故か急に漠然と死にたくなる。
何も才が無い私は将来何にもなれないんだろう。
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ジリリリリリリ
目が覚めた。
真っ暗闇の部屋で液晶だけが光っている。
額が汗ばんでいる。
額の汗を拭い、横にあるペットボトルの水を飲んだ。
デジタル時計は4:00を知らせている。
もう一度寝る気にはなれず、ぼさぼさの髪を掻きむしりながら私は布団から起き上がった。
冷蔵庫を開けると何も入っていなかった。
お腹がすいた私は24時間営業しているコンビニへと足を向ける。
夏の夜はそよ風に優しさを感じる。
目を閉じ優しさに包まれながら明け方の道を歩いた。
いつものように公園の横を通り過ぎようと思ったが、今日は違かった。
騒がしい日常に、電車の端で小さくなりながら涙を流す毎日に少し変化を感じたかったのかもしれない。
真っ暗な公園の中を歩くと木々の隙間が少し薄明るいことに気づいた。
あんな所に2本のもみの木なんて立っていたっけ?
と首をかしげながら吸い込まれるように足を進ませていく。
少しワクワクしていた。
何かが始まりそうな予感と少しの不安で揺れ動くこの気持ちに。
駆け足になりながらもみの木の間を通ると風が思いっきり私の前を通過していく。
ぶわっと開けたそこには、薄明るい騒々しい街並みからは想像できないほどレンガ調の木々溢れる西洋な街並みが並んでいた。