【短編】君と過ごす1日
お久しぶりです
連載の方はどうなっているのか、というお声が聞こえて来そうですが、ちゃんと3月31日までに完結できる予定ではあります
とりあえず、以前休憩に書いた短編をどうぞ
チュンチュンと、控えめな小鳥のさえずりで目が覚める。
さっき見ていた夢はなんだろう。
霧がかかっているようにボヤッとしか思い出せないけれど、幸せな夢だった気がする。
まだ夢の中にいるような、そんな感覚のまま起き上がる。
そうだ、今日は楽しみにしていた"あの日"だ。
今日の予定を思いだすと共に、ふっと体が軽くなったように感じた。
タッタッタっと軽快なリズムを刻んで、階段を降りていく。
ドアを開けるとふわっと香るジャンキーな匂い。
朝食にしては少し豪華な料理が卓上に並んでいた。
美味しそうな料理から目が離せずにいると、私を呼ぶ声が聞こえてきた。
「咲奈、おはよう。」
そんな甘い声に振り向くと、こちらにニコッと笑いかけている人が目に映った。
その周りに、ピンク色の薔薇が咲いたように見えた。
そんな美しい笑顔に見とれて動けずにいると、笑いかけてくれた人物ー名前は綾兎というーが席についた。
「食べよう?」
本人は、私が綾兎に見とれていたことも知らずに問いかけてくる。
その言葉を聞いて、ようやく金縛りから抜けられた私も静かに席につく。
「いただきます。」
口の中に入れただけで、スパイシーな香りが鼻を抜けていく。
噛み締めると肉汁があふれて出てきて、思わず目を見開いてしまうほどに美味しかった。
もう一口、もう一口と夢中になって食べていると、卓上にあったたくさんの料理がいつのまにかなくなっていた。
もう綾兎が作ってくれた料理が食べれないと思うと、名残惜しくなってくる。
そう思っていると綾兎は、また作るから、と微笑みかけてくれた。
一旦自室に戻り、クローゼットから今日着る服を選ぶ。
今日が"特別な日"だからか、いつもよりも服選びに時間がかかる。
白くて可愛いレースがついているワンピースと迷ったが、結局、少しヒラヒラした薄めの白いTシャツにジーンズという、普段より少しだけおしゃれな服に決まった。
普段はこだわらないメイクも、ネットで可愛いメイクを調べたりして少し力を入れてみた。
チラッと時計を見てみると、約束の時間が迫ってきている。
急いで携帯と財布をバックに詰め込んで、階段を降りる。
下に降りると綾兎も準備万端で待っていた。
元々すらっとしている足を魅せる、細身のジーンズ。
黒いぶかっとしたセーター。
かっこかわいいというのはこういうことを言うのだろう。
またもや綾兎に見とれていると、早く行こうとでもいうように微笑んで手を差し伸べてきた。
その手をとって外へと出る。
心臓が高鳴っている。
綾兎は何度私の心を魅了すれば気が済むのだろう。