赤頭巾の少女
ジョーカーは案内の間一言もしゃべらなかったな.
まぁこれは後でわかるんだが,奴の番ではなかったてことなんだ.
大きな図書館をドンドンと下に行くんだが,本の題名が書いているところあるだろう?あれを見てたんだ.
そしたら,それは僕の,君さえも知っているような本が多くあったんだ.
同じ題名の本なのかと僕は思ったんだが,題名と一緒に著者まで書かれているのは君も知っているだろう?
つまりはそれさえも同じなんだ.
ここには,僕らの世界の本が置かれているのさ.
もしここにある本棚が全てそうなら,きっと僕らの世界の全ての本がここにあるね.
いやきっとそれ以上だろうなんて思ったんだ.この予想も後でわかるよ.しかもジョーカーよりも先にさ.
大図書館,そう言うことにしよう,の一番下に着いたら,カウンターがあったんだ.
わかるだろう?本を借りるところさ.そこに紅い頭巾を被りはしないが肩にかけた少女がいたんだ.
さながら,あの物語みたいさ.
「赤ずきん嬢,お客ですよ.洞穴から来たそうで.」
「洞穴から?あの二人が通したのね.珍しいわ.」
見た目通りと予想通りの名前だったが,その声は全然予想外さ.
ここが図書室であると考えればそうなのかもしれないが,とても儚げで影のあるような声をしていた.
「それで,あなたの用は何?」
そう聞く彼女の声と目は見透かす様だったな.それはそれは何もかもを.
「ここから出たいのさ.迷い込んだか何か知らないが,僕は家に帰りたいんだ.」
「そう,別に帰らなくてもいいんじゃない?」
「冗談じゃない.知らなければ信用もできない奴らばかりで暮らしようがないな.」
「それは,例えばあなたが引っ越した時と同じでしょう? そう,だからあなたは引っ越したのよ.」
「何が言いたいんだ.とにかくここから帰らせてくれ.」
とても腹立つものだが,彼女は帰り方を知っているはずだろう.
だから僕は何とか荒立てないようにしたんだ.それに荒立てても勝てやしないよ.
言っていなかったが,ここで本を読んでいる奴はそういう奴なんだ.
今思えばそんなところで信用もないなんてよく言えたものだ.
この世界が僕に都合がよくて助かったわけだ.
「そう,あなたならどうにかなるかしら.」
そういうと,彼女は後ろにあった扉へ入っていった.少しして出てきて,
「ジョーカー,お茶を用意しなさい.働きたいのでしょう?」
と言ったんだ.ジョーカーはそのコロンを匂わせながら消えたんだ.
「あなた,ここにきてからもう随分と経っているのだからわかるでしょう.」
君らもよくわかっているだろう.まあこればかりは仕方ないと思ったよ.
たぶんそんな顔をしていたんだ,僕は.僕を見て笑って彼女は言ったんだ.
「ふふふ,そうよ.お話ししましょう?」