大切なものは何だろう
こういうのって書いている自分も訳分からなくなりそうで,勝手に冷や冷やしながら書いています.
どうぞ良しなに.
さあさあ,また変な質問だ.大切なものだってさ.
いったい何の時間だ?道徳の授業でも始めようというのかい?
僕はもう一度言うが,早く帰りたくなったんだ.答えるのも面倒になって引き返そうとしたんだ.
そうしたら妖精が言うんだよ.
「帰り道はこっちだよ.」
「こっちー!」
小さな体で二人とも先へ行けというんだ.
「帰るなら元居た場所へ戻るのが普通だろう.」
「でもあなた迷い込んだんでしょ?」
「迷い込んだんだからそこが入り口ってわからないね.」
「ましてや出口なわけないね.」
確かにその通りだった.僕は知らない間にここにいたんだからどこから入ってきたのか分からない.
もしかすれば最初に立っていたあの一点が入り口であるかもしれないが,その保証などどこにも無いのだ.ただ,これは現実世界の僕が眼を覚ますことで解決するんだと思っていたんだけどね.
だから僕は妖精の指す方へ向かうしかなかったんだな.
「まだまだ遠いよ!」
「だからお話しましょ!」
二人を放っておく選択はもちろんあったんだ.
だけど考えてみよう.二人は出口を知っているというんだ.
ならば放っておくわけにもいかない.
もちろん一方的にまくし立てて僕の知りたい内容だけを手に入れて逃げるわけにもいかない.
それくらいの常識は持ち合わせているんだ,僕は.これは結果的によい選択だったんだよ.
「じゃあ君たちの質問に答えるから.僕の質問にも答えてほしい.」
「「いいよー」」
この妖精たちの,面倒くさいから彼女たちと呼ぼうか,のちに双子だとわかる.
彼女たちの言動は不思議だ.
ひどく幼く感じることもあれば,それが一切として感じられなくなる時がある.
そう思いながらも彼女らは話を進めたんだ.
「あなたの大切なものは何?」
「なにー?」
「大切なものだろう...やっぱりお金かな.」
「じゃあ他は大切じゃないの?」
「他は大切にしないの?」
「それは随分とイカレた展開だろう?もちろん他に大切なものはあるよ.」
「じゃあ,お金って何なのー?」
「何だろう~?」
「お金があれば,生活には困らないさ.とにかく生きることはできる.」
「お金が無かったらあなた死んじゃうの?」
「死んじゃうの?」
「死にはしないさ,お金は人間,僕の種族の知恵だからね.本能とは違うのさ.」
「でもお金は欲しいでしょう?求めているんでしょう?」
「そのために本能を出す人もいるんでしょう?」
だんだん訳が分からなくなってきた.こういう話は僕は苦手だ.
すると,彼女らはこう言ったんだ.
「大切なものは大切にしないと,大切じゃないことになるよ.」
「そうだよ.大切なら大切にしないといけないの.」
「お金は大切でしょ.そしてほかの物も大切,本当はそれでいいはずなのに.」
彼女らには何かお金に関して,過去がありそうだった.
「いろんな人がいたの.夢だっていう人もいたし,愛っていう人もいた.お金っていう人も.でもね...」
「結局全部触れないの.お金も愛も夢も...」
どういうことか君にはわかるかい?
僕はお金は触れるものだと思っているからね,彼女の言葉はよくわからなかったね.
「お金も触れないの.あなたが持っているのはその触れないものが存在するという証拠だけ.」
「だけど私たちは触りたいわ.触れるということはあるということ.じゃあお金は存在しないの?」
「さぁね.僕ではこの話が妥当かさえも分からないや.」
っていうと,一瞬の静寂の後,彼女らはクスクスと笑いだした.
「なぁんだ.つまんないなー.」
「けどおもしろかったよー.」
どうやら機嫌がいいようだ.話を聞くのがほとんどだったが随分と疲れたものだ.
「さぁ今度はこちらの番だ.出口について...」
と言おうとすると,遮るように二人が言った.
「「もうすぐ着くよ」」
そういうと,僕たちはとても大きな図書館にたどり着いたんだ.