双子の妖精
洞穴の中は別に暗くなく,頻繁に飾られたランプのおかげでむしろ明るかったんだ.
ただ誰かが,何かしらの拍子でランプを壊したら樹に燃え移ってしまうんじゃないかと僕は心配に思ったね.
特に何も起きないまま進んでいると,どこからか声が聞こえたんだ.
「ねぇ,ねぇ...」
なんて声がずっと僕に聞こえていた.
それも周りを回っているように聞こえるから,僕はいかれてしまいそうだったな.
「「ねぇってば!」」
って僕の前に現れたのは,二人のそっくりな妖精だった.
別に君らはもう驚かないだろう.念のためもう一度言うが,これは夢の中の話なんだ.
だから僕も驚かなかった.なるほど今度は君たちなんだなと僕は受け入れたんだ.
「言われるままに来たけど僕はそろそろ帰りたいんだ.どうしたらいいのかな.」
「帰りたいの?どうして?」
「それがあなたの大切なこと?」
「大切なこと?いや,まぁずっと眠っているよりはマシだろう?」
「眠っている?今あなたは今起きている.」
「可笑しな人,可笑しな人.」
妖精二人はそうやって笑いながら,歩いている僕の周りを螺旋を描くように回っていた.
「ねぇ教えて,教えて.」
「教えて!」
どうやらここでは知りたがりが多いらしい.
「「あなたの大切なものは何?」」