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3 絡み付く根の向こう側に

 翌日。



 外は雨。



 僕は思う、桜が咲くと必ず雨が降る日が有るのだと。

そして、多くが散ってしまうのだと。



 こんな雨の日に彼女があの切り株に来るとは思えないが、僕はカッパを着込み例の桜並木を目指す。行く先々にも桜の木が有るのだが、やはり無限と言っていいほど連続で撃ち続けるその雨粒の一粒一粒はとても軽いのだが上空の高い所から徐々に自らのそのちっぽけな重さを重力に乗せて速度を最大にして木の枝に密集して身を守ろうとしている満開の桜に照準を定めて降り注いで来るのである。人間から見れば纏まって綺麗に咲いている桜の花たちも雨粒から見れば各々が孤立している単に小さな薄桃色の花びらに過ぎず、それに目掛けて体当たりを繰り返す事で小さな花びら達はその威力に抗えず、やがて一枚また一枚と落とされ続け、今や木の上よりも足元の方が桜の満開の様な景色を見る事が出来ている。更に雨水の流れに乗って集められそれら小さな花びら達が溜まった所には満開の山を見るよりも美しい日本絵画を思わせる平面的だけれども自然が作り出した花びらの流れる様な配置と重なり合った所がその重なり具合によって異なる濃淡が表す色の奥行きの美しさにしばらく見惚れていた。

 そんな訳で昨日よりも少し遅れて切り株に到着した僕は彼女の存在を願いながら、ゆっくりと、そしてそっと、少し浅目に腰を下ろして、それから後ろへと移動した。


「良かったー来てくれた。」

 いつもの様に腰の辺りに何かが当たった感触があり、その感触と同時にすでに聞きなれた少女の声が聞こえて来たのである。

「悪かったね遅れて、雨でカッパを探していて遅れたんだ。」

「へーそっちは雨なんだ。」

「君の所は。」

 僕の問いに彼女は空を見上げているのだろうか、上を見る為に彼女の丸まっている背中が伸びて行くのと同時に僕の腰の辺りだけに感じていた彼女の感触が背中の上へと広がって行くのが分かる。

「今日もいい天気よ。晴れているけれど薄い透け感のある雲、そうね典具帖紙てんぐじょうしと呼ばれる極薄の和紙よりももうちょっと厚さを感じるオーガンジー生地って言った所ね、それもワッシャーを施した後の小さな皺が幾つも同じ向きで並んだような濃い雲の流れるスジがある薄雲を一面に纏わせている様な空だからソメイヨシノのあの白いTシャツに赤いリップが付いちゃってそれをクレンジングオイルで落とす時の滲んだ端の所の色がまだ残っているのかそれとも湿っていて色が残っている様に見えているのかと言ったもうほとんど色が分からなくなった様な桜の花びらの端の方の色が空の薄雲に滲んじゃってその境界が分からない程になっているけれど、菜の花の黄色の絨毯が桜の花をとても綺麗に引き立ててくれているわ。」

「へーそちらは晴れているんだ。それに君の抒情的な表現が良い。君が見ている景色が君の気持と共に僕に伝わって来るよ。」

「ありがとう、そう言ってくれると嬉しいわ、三島が好きだから。」

「三島? 三島由紀夫?」

「そう、ママが好きで、それで私も好きになったの。『午後の曳航えいこう』の中にある『彼女の肩は海岸線のようになだらかに左右へ下り』って所が好き。」

「君はあんな大人のものがいいのか、将来が怖いね。まさかお母さんを覗いたり猫に何かしたり、お父さんには・・、まあそんな事はしていないだろうね。」

「して無いわよっ。部屋も隣じゃないし大きな抽斗ひきだしも無ければ壁に穴だって開いてないんだから。お兄さんは?」

「僕は三島よりは吉川英治かな、歴史物の方が好きなんだ。三国志とかね。」

「あー、あの長い奴。図書館で見た。赤い箱に入ってて一杯並んでいたよ。」

「ひと月もあれば読めるさ、実際、僕がそうだったからね。」

「へー、ねぇ、お仕事何しているの。毎日ここに来ているけれど。」

「ソフト開発。リモートワークってやつでやってる。」

「パパは何してるのかなぁ。」

「聞けばいいじゃない。」

「あのねー、年頃の女の子はパパとは話さないの。ママとはお友達みたいな関係よ。」

 そんな取り留めも無い話をし、彼女は今日も予備校が有ると言って別れた。


 明日も会う約束をして。


 明日も当然会える。当然の事の様に思っていた。





 彼女は来なかった。

 いや、この表現はおかしい、来ていたのかもしれないからだ。


 だから、『彼女とは話せなかった』といった方が正しいのだろう。



 僕は切り株に座り桜の木を見上げている。

 桜は新緑の葉を一気に吹かせる様に伸ばし、まるで乳歯が永久歯によって抜け替わる様にその葉の成長で押し出されるように抜け落ちていく綺麗な花びらがあちらこちらでひらひらと舞い続けている。人間とは残酷なもので満開を少し過ぎれば、自分達が楽しんでさえしまえば新緑に包まれていく桜の木など見上げるどころか見向きもしなくなり、この桜並木にも訪れる人や立ち止まる人はまったくといっていいほど居なくなった。

 そんな中で僕だけが僅かに残っている花びらのお陰でこれが桜の木だと分かる程になっていてもここを訪れ、桜の木を見上げ、あの花びらがいつまでも残って居て欲しいと願っていた。


 花びらが全て落ちてしまった時、僕と彼女との奇跡の出会いも終わりを告げる様な気がしてならないのである。




 そんな彼女との会話も5日目になった。


 桜の木には、回り込み、あるいは背伸びをし、あるいはかがんで葉の隙間を伺い、あるいは一度離れて遠くから木の上の方を眺めたりしなければ残っている桜の花びらさえ確認出来ない程にあの満開だった花びらの存在は減ってしまっていた。

 それでも僕達がいつも座る切り株の傍に立つ木にこの切り株に座って覗き見上げ、多くの新緑の葉の間からわずかに1枚の花びらを見付けたときにはホッとした。


 そう、彼女にまだ会える気がしたからだ。



「お待たせしました。」

 少し遅れて来た彼女はどこかよそよそしく、高校生というよりはもっと大人の、何と言うか高校生には無い様な秘密を抱えてそれをどう処理して良いのか分からないと言った大人に成りかけの女性が放つ、若い声の中に少しだけ憂いを混ぜ込んだようなやや低めの声がした。

 それは彼女が三島を読んでいる所為なのか、それで感受性がどことなく偏ったとまでは言えないがその影響を受けているのかと思いながら僕は聞き返した。

「どうしたの、いつもと感じが違うけれど。」

「・・・」

 しばらく彼女は沈黙する。

 僕は待つ。彼女の気持ちが話したくなるまでと思い。

「あのぅ・・」

 ゆっくりと話し始めてくれた。

「お兄さんって出身高校はどこ?」

「弥生ヶ丘って言うんだ、女子高みたいだろぅ。元は女子高で共学になってから僕は入ったんだ。」

「・・・」

 また彼女は黙り込んでしまった。

 腰の辺りの彼女の感触が、ゆっくりとしかも大きなため息を吐いているのを感じる。その時間と今までに無い雰囲気に耐えきれずに僕はゆっくりと話し出した。


「具体的に聞いて来るなんて初め・・」

          「お兄さんの好きな人って・・」

 僕の話しの途中で彼女は少し荒々しく話し出して僕のそれを遮断した。


 彼女は繰り返す。

「お兄さんの好きな人って、演劇部の人だったって言っていたよね。」

 強い声に彼女の真意が分からない僕は少しの困惑とその後の展開に警戒をしながらも記憶の中の女性ひとを思い出しながら答える。

「そう、大きくて綺麗な瞳に僕の好きな声を持ってた。そう言えば、何だか君と同じ様な声質かもしれない。そうか、君に何だか懐かしさを感じていたのはこの声だったんだ。」

「あのね、  私来なかった日があったでしょ。」

「ああ、でもそれは君の所が酷い雨でお母さんに止められたんでしょ。」

「そう、その日ね、ママから『どうしてそこまでして行きたいの』かって聞かれて、ここでの話をしたの。最初は全然信じて貰えなかったけれど、色々と話している内にママの思い出も話してくれたのよ。ママの高校時代の話し。ママもね弥生ヶ丘高校卒業なの。」

「えっ?」

 そこで僕達の会話は暫く止まる。僕は状況が飲み込めないのと、きっと彼女は言って良いものかどうかという事を悩んでいたのだと思う。それでも僕はその先を知りたくて話し始めた。

「聞かせて、君のお母さんの話し。」

「・・・あのね、お母さん、演劇部で男役をしていたって、何でも学校には女性が多くて、それにお母さん背が高い方で声も落ち着いていてというよりか他の子達よりも大人びた響きに聞こえていたからだって。それで、ある日ね、同級生の男の子から告白されたって言ってたの。・・それからね、別れた時の話も聞いた。ママから言ったんだって、『私達、別れましょう』って。」

 僕は混乱していた。それは僕の記憶の中の出来事と一致していたのだが、今話している彼女は16才の娘で、どう考えても年齢的につじつまが合わないのである。そして彼女は続けた。

「私の名前、水越 咲春さくらって言うの。お母さんは 悠華ゆうか。旧姓は 高岡なの。」


 『高岡 悠華』 


 言葉を失った。


 10年間もの間、それもほんの6日前まで、僕がただひたすら待ち焦がれていた人の名前だ。


 10年間もの間、ひたすら神に縋り、偶然という奇跡を信じて待っていた運命の人の名だ。


 思考が止まる。

 時間経過が合わない。

 おかしい、何かが変だ。



 そして彼女が再び話し始めた。

「ママね、何で別れたのか分からないみたいなの。何か突然思っちゃったみたいなの。でもね、『友樹ともきくんに止めて欲しかった』って言ってた。『嫌だ』『僕は別れたくない』って言って欲しかったって。  ねえ、お兄さんの名前、教えて。」


 僕はゆっくりと、彼女と自分をも驚かせない様にと一呼吸置いて言った。


「僕の名前、それは、前里 友樹。」



はっっ

 後ろの彼女が大きく息を飲むかすかな音と振動が伝わって来た。


 僕はゆっくりと聞き返す。

「君のママの高校時代の彼って僕と同じ名前。」

「・・・」

 彼女からの返事は無いものの、強く頷く振動が伝わって来た。

「そうか、今は幸せなんだ。良かった。」

「でもどうして。どうして私達がここで会っているの。」

「さあ、たまたま同じ日に失恋したのを桜が繋いでくれたんじゃないのかな。この切り株には今でも悲しみが残っていて、それにたまたま僕達の気持ちが乗って繋がった。そう思った方が浪漫が有るでしょ。」

「ママね、言ってたの。突然家に来て『朝日が昇るのを見に行こう』って連れ出されて、昇る朝日の弱くて寒くて薄い光に包まれながらキスされたかったって、そんな女子生徒の夢を見ていたって、そして彼にはそんな馬鹿げた事をして欲しかったって。『無理なのにね』って笑ってた。」

 急に高校時代の彼女の笑顔が浮かんだ。心の奥底に仕舞い込んだ幾つもの思い出の中から最高の一枚を取り出して頭の中に広げた。それと同時に涙が溢れて来た。


「友樹さん、泣いてるの?」

 どうやら僕が涙を堪えようとして呼吸が乱れているのが彼女に伝わってしまった様だ。

「ああ、僕は何てダメな男だったんだろうって、悠華さんが本気で別れたくないって思ていたなんて、今更だ、今更判ってもどうしようもない。僕はバカだなって。」

「そんな事無い、だって本気でずっと思っていたんでしょ。」

「ありがとう。でもね、それは意中の人に伝わらなければ全く意味のない事なんだよ。」

「そんな事無いよ、だって私も分からないんだもの。図書カードが埋まる程本を読んでも、ママの持っている本を全部読んでも、スマホで調べても、ママからの話を色々聞いても、やっぱり先輩の心なんて分からなかったんだもの。私はまだ先輩とは付き合っていなかったけれど、好きな人が居るって言われた時にすぐに引き下がっちゃったんだもの。それってバカだとか、弱いだとかそう言った事じゃなくって、未熟の所為だと思うの。経験が少ない所為。目や耳から入れるものだけではなくて、実際に体験して何度も心を絞り続けてやっと得る事の出来る自分だけの経験。それが、それだけが『嫌だ』とか『待って』とかって相手の言葉に対抗できる力に成ると思うの。だから、ただ待っていたからって自分を否定しないで。友樹さんも何度も心を絞り続けたんでしょ。」

「ふっ、 参ったなぁ、年下の女の子に励まされるなんて。それに『心を絞る』か、君らしい表現だね。自分の心と向き合い、それを鷲掴みして捻じり上げ中に浸み込んでいるモノを絞り出す。出て来たモノとも向き合い足りなかったモノを考え探し補給する。絞った後の心は以前よりももっと色々なモノを吸収して大きく膨らむんだね。でも、自分の中に潜んでいる心と向き合うのは難しい。何処に在るのか探さないといけないからね。彼は別れというとても悲しくて恥ずかしくて恐ろしいものから逃げる為に何処かに隠れてしまっているだろう。それを見つけて引き摺り出し向かい合うのはとても怖い、さらに絞り上げるなんて痛くて辛くて苦しくて、躰よりも引きちぎられる感じがするだろう。君はそれに耐えられるのかな、いや、耐えたからここに居るのか。」

 僕は泣いて少し弾むような呼吸を押さえながら空を仰ぐように残っている桜の花びらを見つめた。


「友樹さんの姿が見たい。」

 背中越しの彼女が呟く。

「ああ、僕も咲春ちゃんの姿が見たいな。」

 僕もそう思った。


 自然と手と手がお互いの手を探していた。


 僕の右手と彼女の左手が触れた。


 自然と指を絡ませ、離れない様にお互いに強く握り合った。


 切り株から離れない様に、ゆっくりと体を回して後ろを覗き込む。



 そこに彼女は居た。



 泣き顔の彼女が居た。いつの間にか彼女も涙を流していた。



 懐かしい、僕の記憶の中から引き出した遠い思い出の中に居る高校時代の彼女が今、目の前に居る。

 前髪は眉毛を優しく包む様に内側に巻きながら左右に別れ、ストレートの黒髪は顎のやや下で纏まってから更に肩へと広がり流れて行く。彼女の芯の強さを示すようにキレのある二重のアーモンド型の目は前髪の下から吸い込むようにその黒くて大きな瞳を輝かせ、頬のラインがゆっくりとわずかな膨らみの曲線を描いて小さなあごへと続いている。桜の花弁の付け根の所よりもやや濃いピンク色をした艶やかで小さな口は左の口角だけが少し上がった微笑みを浮かべそれは僕の記憶の中の彼女そっくりであった。

 咲春ちゃんが言う。

「私ね、ママにそっくりって言われるの。どう。」

 僕は感慨深げに言った。

「ああ、本当にそっくりだ。僕の記憶の中に居る君のお母さんに本当に似ているよ。髪型も当時のままだ。」

「本当、良かったー。」

 そう言うと彼女は瞳を閉じて声を抑え込む様に、大声で泣き出したいのを無理やり抑える様に荒くなる呼吸を飲み込む様にしてむせびながら強く閉じた目から涙を流し出した。

「どうしたの?」

 彼女は痙攣する呼吸に言葉を詰まらせながらも何とか答える。

「ひぃっ・・私ね、ひぃっ・・友樹さんの事、・・ひぃっ・・好きになっちゃったの。」

「えっ、でも僕達は会って、いや声を聴いてまだ5日目だよ。」

「ひぃっ・・好きに・ひぃっ・・好きになるのに、・ひぃっ・・日数が関係あるの。」

 僕は思った。僕自身が悠華さんを好きになったのも一瞬だったのだと、あの日ステージに立つ彼女の目と声に一瞬で魅かれたんだと。だから、今目の前に居る咲春ちゃんが僕をたった5日で好きになっても、声と会話だけで好きになっても何ら不思議は無いのだと。そして彼女は続けた。

「・・ひぃっ・・・でもね、・・ひぃっ・・ダメなの。・ひぃっ・・待ってもらうの2年じゃないから。」

「・・・」

「20年。 ひぃっ・・無理よね、ひぃっ・ひぃっ・・今まで10年も待ってて・ひぃっ・・更に20年もなんてひど過ぎるもんね・・ひぃっ・・。」

 言い終わると彼女は右腕で涙を拭って笑顔を見せた。きっと彼女は母親からの話を聞いた時すでに僕と共有しているこの時間が本当は接する事の出来ない、誰も証明すら出来ない時空を超えたものである事を知っていたのであろう。そしてここに来るまでにすでに泣いていたのかもしれない。だからこそ、こんなにも短時間で、涙を拭うだけで笑顔を僕に向ける事が出来たのだろうと思うと16才の未熟な女性だと思っていた自分を恥じた。


 呼吸を整える様にゆっくりと息を繰り返し、目に涙を残しながらも笑顔を向けている。

「そうか、僕のいるこの時間に君はまだ産まれていないんだね。」

 彼女は涙目のままコクリと頷く。

「君ならきっと素敵な恋愛が出来るさ。」

 僕は笑顔で言う。

 彼女はただただ笑顔で答えていた。


 突然2人の間を、その見つめ合っている視線を邪魔するかのように一枚の桜の花びらが横切って落ちて行く。


 その桜の花びらに2人視線が奪われ、共にその落ちる先を見つめてから再び視線をお互いに向け合った。



 すると、彼女の姿が薄れ始めた。握っている手の感触も弱くなり、広がっている指同士が近づき出す。


 それでも彼女は笑顔を向けている。


 僕は少し叫ぶように強い口調で言っていたのかもしれない。

 

「素敵な恋愛を。」


 すると彼女も言う。


「友樹さんもね。」


「咲春ちゃん、いつか何処かで。」


 すると彼女は答えずに、ただしっかりと頷いた。




 そして、僕の目の前から彼女は消えた。




 僕は切り株に座ったままで桜の木を見上げた。そこにはさっき迄在った最後の花びらは無く緑一色の空しい桜の木になっていた。


 そして僕は思った。

 やはり桜の木には何かしらの感情受容体が有り、それを皆が共有し同調しているのだと。


 だが一斉に咲いて一斉に散ると言うのは違っていたのだと分かった。


 彼等桜の木は僕達人間の心を見透かし、頃合いを見計らって人間の気持ちに高揚感を植え付けながら咲く速さを調整するのと同じ様に、散る時も我々の心に寂寥せきりょう感を残すように散ることで次の年の桜の開花を恋焦がれさせるのであると。





 切り株から立ち上がった僕は、お尻を2、3回だけはたいて汚れを落とし、


 振り返る事無くその場所から歩き出した。

あと数年で母校である弥生ヶ丘高校が統合で無くなってしまうという連絡が有りました。

正門へと続く道に並ぶ桜が美しい学校です。

今はもう散って、新緑の葉が希望を持って活き活きと風にそよいでいますが、いずれはこの木達も切られてしまうのでしょうか。そんな思いから書いてみました。

このサイトに投稿しておけば学校の名前が残るのかなって、ちょっとだけの抵抗です。



それと、この物語のストーリーは初め、咲春の母親がひと月前に同級生であった友樹の葬式に行ったというのを咲春に語るものでしたが、やっぱり最後は希望を持って歩き出したくて、今のストーリーにしました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 20年後、まだ独身だった友樹さんがすごく年下の子に捕まるんですね。
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