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第九話 え? おいウソだろ!

009


 「え? おい、ウソだろ! ニルス、まだ説明の途中だってばさ……」


 僕が突然、PTを解散したものだからPTの良さを得意げに語っていたナーチがビックリしたのか、焦る口調でそう言った。

 

 僕としては、アズさまの様にスキル名がPTに表示されてしまう機能に引いてしまって、そりゃ今すぐどうこう成る訳でもなさそうだが、万が一その後、彼らが何かを試して無意識に発動する防御するスキルだった場合に備えて、一旦この人達から離れるのが賢明だと思っての行動だった。


 色々と教わって置きながら、冷やかされたら嫌だな要素が飛び出てきた途端に拒絶するとか失礼なのかも知れないけど、彼らも強要じゃ無いと言ってくれていた事だし……。


 彼らに悪気は無さそうだと思うし、親切そうな連中だと感じてはいるのだけど、何でも指示に従って、自分の心配事に出くわして冷や汗かく羽目に成っても、それは油断をした僕の自己責任だから。

 

 少しずつ距離を埋めていくのも良いのではないかと思うのだ。

 

 彼らよりも先に友達に成ってくれた、ヤンくんに悪い気がしないでもないから。

 ヤンくんは、この先の訓練所で今、必死に魔物と格闘している事だろう……かと言って自分もクリアしなければならない課題が待っているのだ。


 モグリン達の思い出話を聞く限りでは、魔物って相当手ごわい感じだなぁ。

 僕は、暫く沈黙していた。


 沈黙しながら彼らの顔色を、視線を微妙に外しながら窺っていた。

 PTやリンクスキルの性能に興味がないワケでは無い。

 喉から手が出るほど興味のある話題だ。


 これまで様々な場面で、浮かれている時ほど油断が生じて、良いこと聞いても裏目に出るパターンの自分を見て来たから少し慎重になって、石橋を叩いて歩くことも覚えなきゃと思っただけだ。



 「──どうしたんだい? 気分でも悪いのか? 少し顔色が良くないようだけど」


 「……折角、色々と紹介してもらってワクワクもしたけど、今フェンスの向こうでヤンくんが魔物に苦戦してるんじゃ無いかと不安になったものだから。次が僕の出番かと考えたら、君達の話が重くなってきちゃってさ……ごめん」


 モグリン達は、何だか体調や顔色まで心配してくれている。

 それなのに魔物への不安という話題に逃げ込んでしまった。

 いや、確かにそれもあるんだけど。

 PTを組まずに話をして情報を得たいと言うのが、今の素直な気持ちだ。


 そこで僕の方からも質問をして見ることにした。


 「……いつかPTを組む必要があるだろうけど、今それをすると何だか急に強くなった気がしてテンションが上がったよ。だけど、これからソロのクエがある訳だから控えて置きたいんだ。──少し疑問点が出て来たので聞かせてもらえるかな?」


 率直な意見だけに絞って訪ね返した。


 「ああ。俺たちはも焦らせた感はあった、すまない。それで疑問点というのは……?」


 モグリンが気遣いに欠けていたと言い直し、和らいだ表情で応えてくれた。


 「話をするだけなら、ベンチにでも腰を下そうぜ」

 「そうだな、そこのオープンカフェの席にでも座るか…」


 ナーチがそう促すと、バブチがカフェの方を指差してあそこの席が良いと言った。僕達4人はオープンカフェの木製の4人掛けのテーブルに足を運んだ。


 

 この辺りが練習所と呼ばれる広い空き地を兼ねたグラウンドに成っていて、その所々に休憩所となる飲食店や様々な施設が点在していた。

 戦術を紹介した書店もあった。


 手軽に汗を流したり、着替えに適したシャワー室もあれば、避暑目的での体力向上を狙える冷水プールもあり、百人単位で使用可能な大規模な筋トレ施設が完備されていた。

 

 勝負飯にと練習生が立ち寄る大盛りステーキハウスに丼物の店、それに単独で考え事をするのに適しているファーストフード店も軒を連ねていた。


 候補生と成った僕らの利用費は発生しない様だ。

 これも、お得感満載の勇者候補生の特典だ。

 弱虫だろうと、ヘタレだろうと希望者が後を絶たない理由の一つでもあった。


 最も、免除特典は初回クエをクリアできればの話だけど、現在は試験用のクエストを受注中なので、お金は要らないみたいだ。

 だけど、子供だけでこう言った店に身を寄せていても良いのは、それを許可された施設だけだろうと思う。


 その辺の細かい事なんかの情報が得られるのも仲間を持つメリットだとかは、学校で教わっているから蔑ろにしたりしないけど。


 カフェの席に腰を下ろして寛ぎムードになる4人。

 2人ずつ向かい合って席についた。

 僕の左隣に口数少なめのバブチが座り、正面にモグリンが居て、バブチの正面にはナーチが自然と座っていた。

 

 僕は一瞬ハッとした。


 これって普段、僕の居る場所はヤンくんが居てるのでは無いかと思ってしまったのだ。

 ま、そうじゃ無いかも知れないけど。

 一応、友達でもこの人達は先輩なのだから、その立ち位置も大事な情報だと僕は思った。

 この場にヤンくんが、ひょっこり姿を見せたら何か空気が重くならないか心配になった。


 「さ、席も決まった事だし、ニルス、何でも聞いてくれ……」


 カフェの席に着いてから、開口一番でモグリンがそう切り出してきた。

 向かいの二人は、僕が質問をする事が心地良いかの様に声を弾ませていた。


 隣に居たバブチは相槌を打っていた。

 カフェは割と空いていて、他の候補生と役員はずっと遠くに見えて談笑したり、作戦会議をしたりと言った様子が窺えた。


 僕達もここで作戦会議と洒落込むのだな。


 「さっきのPTを組むシステムの事なんだけど……」

 「おお、そう来たか! PTを組む。魅力あんだろ!?」


 僕の言葉に2人が食い入ってきて、拳を握り締めながら瞳を輝かせながら、テーブルに身を乗り出して迫って来た。


 「う、うん。それで、背後からいきなり知らない連中にPTの招集にあったりしないの?」


 これって気になる仕様だと思う。

 不意に魔物に襲われる様に、知らない人にPTシステムで攫われたりしないのかって事を聞いてみた。


 「ほう、そう来たか。さっきは解散になったから見せて解説出来なかったが、誘われる側には縮小された地図が開いて、目の前に

 "PTに招待された、返答せよ"【YES/NO】と表示されるから、嫌なら断れば良いだけだ」

 「お断りは当然、NOだぞ! あと、嫌な奴がいるなら名前に指で左から右へ一本線を引くと、延々とブロック出来るんだぜ! 解除するには、右から左へ指で取り消すように線を引くだけさ。」


 ナーチがすかさず説明してくれた。


 「アズ様のリンクスキル<ソウル・クロス>には、さっきも言った様に冒険者の名を周りから検索できる仕様だ。人とすれ違う時とか、結構やっている人はいるそうだ。一度組んだ相手は、初期のステータスが入ってきて、何度も繰り返し組むとPT信頼度が上がり、その後のレベル状況も確認できる上、相手の受注可能クエストをその場でお裾分けしてもらえるんだ」


 「へえ……そーなんだね。凄いね」


 「上級者が持つクエの中には初心者にとって美味しいだけの簡単クエがあって、売買される事もあるぞ」


 ナーチが詳しく補足してくれて、僕が息を吐くとモグリンも挟み撃ちで情報をくれる。

 かつての飛び級女子の方の知識と経験がどれほどか、良く分かる気がする。

 実践経験が無いと得られない勇者の情報だ。

 貴重だな、仲間って言うのは……。


 「売買って、どうするの? 現金のやり取りってヤバくないの」


 「それについてはね、僕が僕が!」


 バブチも堪り兼ねて踊り出す様に挙手をして、会議に参加してきた。

 

 バブチの話を要約すると、お金には現金とチャージ金があるらしい。

 

 現金は普段使ってるヤツで、チャージ金とはそのスキル地図を開いて、報酬等の交換所で現金や報酬自体を入金しておく事で、旅先でのスキル地図上で情報や物資の売買がスムーズに可能となるのだとか。

 

 アズ様のスキル地図は高位スキルで、アイテムボックスも付いているスグレモノだとか。

 そこに装備や食品、回復薬を入れて置けるので売りたい物を入れて、買う物の為に空きを作っておけば良いらしい。

 

 勿論、PTを組む必要がある。組めば味方を攻撃できないので安心であると。

 少し距離を置いてから解散をすれば更に安心なんだってさ。


 「え? おいウソだろ! なんて便利な高位スキルなんだ!」


 

 パイセンの前で思わず、口走ってしまった。

 皆、最初はそうだったと憩いのオープンカフェの空の下に笑い声が響くのだった。


 

読んで下さってありがとう。

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