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第八話 スキルリンクとパーティー

008


 ──ヤンくんに触発されて、初回クエストをこなしに行こうと訓練所に向かって歩き出した時だった。

 その近くに居た、マグニートの話で盛り上がっていた候補生が何人か、僕に声を掛けてきた。


 「いま小耳に挟んでしまったんだが、君のスキル……五大高位の絶対系だって言ってたよね!」


 「ひっ……!! 聞いていたんですか!?」


 僕がその言葉に驚いて振り向くと、そこに3人の少年が立って居た。

 3人はやけに五大高位スキルに興味津々で目を輝かせて居た。

 その内の1人が更に話しかけて来た。


 「やあ、ニルス! 名は聞こえていたから呼ばせてもらうよ。さっきヤンくんが君に好意を寄せていたから、気になって聞き耳を立てていたんだ……」


 「……ヤンくんの知り合いですか?」


 「俺たち3人も、ヤンくんと同級生で本日めでたく候補生デビューしたんだ。俺は、モグ・プクリン。仲間内には、モグリンと呼ばせてる。後の2人は……」


 どうやらヤンくんの友人の様だ。

 この人も、愛称を呼ばせるタイプか……。

 出で立ちも僕とそう変わらない。

 

 頭部は、ツバを後ろに被ったスタジアム・キャップで身体は上下揃ったスポーツウェア。


 夏らしく半袖、半ズボン。

 足元は、バスケシューズ。

 それぞれにカラフルな色合わせの軽装だ。

 ヤンくんも似た格好してたな。


 眼鏡や、伊達メガネをかけている人は居ない。

 勇者試験だし、オシャレの必要も無いと言えば無いけど。

 

 僕は、野球帽じゃなく犬耳の付いたベレー帽を被っていた。

 ズボンの背に小さな子犬の尻尾を母が特製で縫い付けてくれたのだ。

 チャオズの事で寂しくしていたから慰めになればと……これは、ぼくのお気に入りなのだ。


 オレンジ色と黒を基調にした服装で決めて来ました。

 


 「僕は、バブ・ボブルだけど、バブチって呼んでね」

 「オレも、ナーチュ・ルンタだけど、ナーチって呼んでね」


 結局、愛称で呼び合うぐらい、仲が良いんだと言いたいんだね。

 名を名乗るくらいだから、それも愛称を呼ばせるくらいだからきっと、仲良くしようと言い寄って……スキル内容を聞き出そうと言う腹積もりなのだろうか。

 用心せねばな。


 聞かれても、出せる情報が何も無いのが現状で、鈍感って言葉を自ら陽気に語れる性分じゃないので、いじめられたって言わないよ。



 「なんだか緊張してるって言うか、もしかして俺たちの事を警戒している感じかな?」

 「え、いや。……その、そんなことは無いけど……」


 うわ、顔色(うかが)って来た。

 不安が表情に出ていた居た様だ。

 モグリンが代表で話す感じだから、彼の目を通して首を横に振って見た。

 

 すると、3人は下級生に詰め寄った感じを和らげようとしてか、僕の頭をモフる様に撫でたり、肩にポンポンと手を当てて優しく微笑んだり、オヤジギャグを言って宥めようとしたり色々陽気な顔を見せてくれた。


 この事からも、別に悪気はない様だと分かった。

 でも何故こんなに取り繕うように又、僕の機嫌を損ねないように態度を改めるのだろうか。

 上級生ならもう少し、上から目線でも不思議じゃないのに。

 ふむ、やっぱり絶対系だって所に敬意と言うか、恐れと言ったものがあるのかも知れないな。


 いや、待てよ! 何でこの人たちは、絶対系の凄さを知っているんだろうか。

 ポンポ先生に聞かされたと言う線もある……だが、それだとどうにも腑に落ちない。

 

 僕の様に五大高位スキルを引き当てたのなら、その説明は受けるだろうが、そうで無いのなら忙しい筈の先生が全員にその説明をするのは考えにくいから。

 

 仮に、この人たちも五大高位スキルを手に入れたとすれば、僕にすり寄ってご機嫌窺いの意味は果たして何なのだろうと思うから。

 でもまあ、ヤンくんも絶対系だと言っていたので、既に見せつけられている可能性もあるのか。


 ははーん! さては、同級生と言っても仲が良いわけでは無いのかも知れない。

 仲が良いならヤンくんがいる時に声を掛けて来れた筈だ。

 

 案内書にあった勇者候補生の五箇条がひとつ……『火の用心よりも心の不用心が命取りだ。甘言、勧誘、スッカラカン。安っぽい同情ほど後で高くつくのが世の常なのだ』と。


 ここは一つ、用心していこうと思います。


 

 「……ヤンくんとは、先程、友達に成らせて貰いましたが、ぼくたち初回クエストを済ませて広場で再会する約束をしましたので、訓練所へ行かせて下さいね」


 そう言って先を急ごうとすると、彼らは意外な事を言って僕の行く手を阻んで来るのだった。


 

 「まあ、待てって。俺たちも初回クエはこれからだよ。その前に君に声を掛けたのは、ヤンくんが好意的にしていたからだよ。俺たちは、幼馴染でいつも一緒に過ごして来た……」


 ん? 

 モグリンが何やら熱弁してきた。

 彼らは幼馴染……?



 「……アイツさ、授業中は居眠りばかりでさ、最近は退屈そうにしていた。それがさ……去年も候補生の試験を受けたんだけど、今回の様にスキル付与なんて無いから、魔物と相まみえてボロッボロにされて落ちたんだよ……」


 「……去年も!?」


 「ああ。試験内容は今回の魔物を7日の内に3匹単独で退ける事だった様だ。根性のある彼は、三日掛けて3匹目をやっつけられそうだった時、同時刻に周りで戦う挑戦者が一人、ジリ貧で彼の方へと移動してきたんだ。互いに顔を見合わせてしまって……」


 「え!? なになに……」


 モグリンの口振りだと何か問題でもあるかの様に聞こえてしまい、僕は話に食いついてしまった。

 

 その状況ってば、今日の午前だけでも百人は希望者がいるのだ。

 僕でも受かる勇者候補生……集まった人は全員が受かるだろう。

 その人数が訓練場に入れば、いや入場制限もあるだろうけど……必然的に混雑は主催する側も想定できる範囲内のはずだけど。

 一日一匹で三日で3匹目って事でしょう……何が起きたのか、聞いとかなきゃと思ったんだ。


 モグリンは、予想外の出来事を聞かせてくれるのだった。


 

 「ヤンくんと別の子が顔を見合わせていたその時だった! 魔物がそれを見て複数人のPTだと感じたのか、仲間を呼び寄せたのだ。魔物は2人の分の2匹に加えて、更に2匹増えたんだ……」


 スキルも無くて戦闘未経験の10歳の子供の前に4匹の魔物か、それはキツいな。

 じゃ、その日は駄目だったのか……。


 「……別の子も最後の1匹だったらしくて、1匹だけすかさず退けたんだ。するとその時点でクリアの合図のベルが鳴ったらしく、その子は回復役員が保護して外に出たのだ。──だが、ヤンくんの前には3匹の魔物が残った。その日は勝ち目が無く、仕方なく次の日へと……」


 「……魔物が3匹も一度に襲って来たら、仕方ないですね」


 運も実力の内と言うけど、運が悪かったんだなぁ。

 僕は、掛ける言葉が見つから無くて仕方ないね等と相槌を打ってしまった。

 その展開でも試験は続行になるのか……。

 モグリンは、その先の事を話してくれた。


 「……次の日へと持ち越せば、後一匹で良いんだ。そう誰もが思ってヤンくんの応援を学校でもしていたんだ。ところがね、次の日から訓練場に行ってヤンくんは、茫然と立ち尽くすしか無くなったんだ」


 「……どうしてですか?」


 結果は先に聞かされて知っているんだ。

 ヤンくんは去年、この試験に落ちたのだと……。

 だが彼が茫然と成った詳しい理由は知りたい。

 だから、つい聞いてしまう。

 

 僕が聞かなくても、この人たちはその事を聞かせるつもりで僕を引き止めたのだ。

 なら、僕は聞く。


 「……ヤンくんは、その時戦っていた魔物に顔を覚えられたみたいで、あの日の魔物が3匹余計に現れるように成ったんだって! つまり、毎日4匹も現れるから大変。7日目のラストバトルでも1匹に集中して戦うのだが、無理ゲームと化して役員たちからも、その年は見送りなさいと言われ断念したんだ」


 「魔物って人の顔、覚えるのね……」


 僕は、耳寄りな情報を聞かされている事に気付いた。

 さっきまでこの人たちを不審に思って用心していたのに……。

 ぼくの嫌な予感は、いつもすぐ外れる。


 「そうなんだよ。だからヤンくんは、今年何か特別な対策が導入されると直感したんだと。調べてみると2年前にもスキル付与があった事が判明。その時、1つ上級生だった女子が10歳で合格した上に、その後も優秀な成績を打ち出して、10歳にして飛び級でトントン拍子で中学を卒業したらしい……」


 「うちの学校(ガッコ)は、高校まであるだろ? だから彼女とヤンくんは、ガッコの中で良い仲に成ってたみたいでね。ヤンくんとしては、優秀な候補生と一緒にいれば体術の稽古もつけてもらい次の試験までに強くも成れる訳だから……」


 確かに、『ヤンくんカッコいい!』と声援が飛んで来ても不思議じゃないくらい彼は、男前ではあった。

 年上の彼女か……僕は、まだそういうのはいいや。


 「──上手く行っていた二人だったけど、春先頃に彼女がまた飛び級でさ、大学まで進級したんだよ!」


 「え!? ……そ、それじゃあ。だ、大学って確か、この町には……」


 「ああ、その通りだ。この町と言うより、規模の小さいこの国には無いよ。隣接しているが、ブラッドボール中級国家へと留学することが決まってな、旅立ったよ」


 ヤンくんは、遠距離恋愛なのかな? それとも……。

 ヤンくんは11歳。彼女は12歳。

 12歳でもう大学生。


 「あの、その……そんな切ないメモリーで僕の胸を焦がすのが目的じゃないよね? 伝えたい事は他にあるのではないでしょうか?」


 ヤンくんには気の毒な事だけど、やっぱり僕には難しい話だから、それを初対面で聞かされても困るわけですよ。

 僕は、一刻も早く勇者試験に合格したい。

 今はそれだけだと、モグリンたちに伝えようと思いその様に切り出した。


「ああ、勿論だとも。俺たちは今回初めて候補生に挑戦するんだが、ヤンくんに誘われた訳ではない。飛び級の女子とは俺たちも付き合いがあって、話をしている内にスキル持ちに成りたくなっただけだ。そこで得た知識があって、君にその知識を伝授したいだけさ……」


 何だか好意的で嬉しい話なんだけど、どうして僕なのか率直に聞いて見た。


 「親切にしてくれる理由を聞いても良いかな?」


 「そうだね……。アイツは勇者に成って、この国を出ようとしている。俺たちを誘わないのも、何かと一人で責任を背負うタイプでね。旅立つのも応援したいし、一緒にも居たいと思ってここまで来たんだが、アイツの絶対スキルに太刀打ち出来なくてね……」


 なんて言うか、お手伝いは要らない的な挨拶で返されたワケだね。


 「……お節介は止めてくれ的な事ですかね?」

 

 「まあ、そんなところ。そこで珍しく他人に興味を持った様な場面を見かけたものだから。……ニルス、君を陰ながら応援させてもらおうと俺たちは考えて、声を掛けたって訳さ。アイツに煙たがられるのも避けたいから、強要はしないけど……良ければ応援するよ」


 何とも友達甲斐のある人たちだと素直に思えた。

 僕は、周りがどうかと言ってられない。

 自分がどうかだと思った。

 僕は、この人達をより良い冒険仲間として様々に情報を共有できれば有難いと思ったので、その旨を伝えてみた。


 「情報を交換できる仲間や、応援はあった方が心強いから有難く受けたいと思います」


 声を掛けられたのは、集会所の正面玄関の脇の木陰だった。

 そこで暫く立ち話をする形だった。

 アズ様のクエスト説明が終わった所で、7時50分頃。

 ヤンくんに声かけられて、次にこの人たちとのここまでのやり取りで更に20分ほど経ったから、今8時10分頃。


 僕の気の良い返事にモグリンたちは、上機嫌で何やらぼくの手を引いて訓練所の近くへと行くのだった。

 訓練所の手前に練習所があって、作戦会議や練習バトルをしている人達が何十人も集まって居た。

 

 

 訓練所の所在地は、広場の集会所の裏口側から、約5キロメートル北に進んだ場所にあって、訓練所には高い城壁を思わせる頑丈な金網が幾重にも張り巡らされていた。

 恐らくこの向こうに魔物が放し飼いにされている為だろう……。

 訓練所の敷地は練習所も含めて、クエスト地図で確認すると約1千坪とゆったりと広がっていた。


 練習所には、魔物は居ない。

 仮設テント付近で役員たちが軽装ではあるが、候補生に装備品を貸し出していた。

 装備品の内容は、皮で造られた鎧の上下、頭も衝撃を少し和らげる程度のヘッドギア、籠手、足元の防具も皮の靴があった。

 一般人がファッションで身に付けている物など比べ物に成らない程の強度で造られていた。

 その他には、木の盾と武器が数種類あって、選べる様だった。


 武器は、檜の棒、銅の剣、樫の杖、素手の足しにはなるナックルグローブ。

 防具一式とグローブと棒が人気だとか。

 剣は割と重みがあって体力が返って削られるとか。

 杖は魔法がまだ使えないと邪魔になるだけと、オススメじゃないみたい。

 

 勇者の訓練所は、主に草原地帯で遠目に森林地帯が続いているのが見えた。

 訓練所の入り口付近にも仮設テントが設置してあり、テーブルやイスと共に役員が20人くらい配置されている様だ。

 その手前付近が練習所に成っており、ここまで来るのに20分程かかって時刻は、8時30分頃だった。


 モグリン達は、僕にどんなアドバイスをくれるのだろうと思って、少しの緊張もあり、楽しみもありで黙って彼らに着いて来た。


 僕達4人の練習場所を確保する様に3人は、少し距離を取って陣を組む様に促して来た。

 先ず、4人は1メートル間隔の間を空けて輪になって向かい合う姿勢に成った。


 「──今度はオレが説明するから!」


 と、モグリンとバブチに牽制するかの様に、ナーチが発言権を確保した。

 ナーチが何やら聞かせてくれる様だ。


 

 「ニルス、初回クエは単独行動だが、PT(パーティ)とスキルリンクを覚えておくと良いぞ。まず、PTを組んで見るか。アズさまの地図機能を発動して見てくれ。そこに、傍に居る者の名がピックアップされて表示されているだろ? 右の方にな」


 ナーチに言われて地図を見てみると、右手の方にこの3人の名が浮かんでいた。


 「……それを指先で触れると【PTを組む者を選んで決定】が項目に追加された筈だ。皆の名に全て触れて【PTとしてリンクを承認する】を選んで見てくれ……」


 「ふむふむ……こうですか?」


 言われる通りにやって見ると、4人が白い帯状の光で繋がっているのがハッキリと見える様に成った。


 「これでオレ達は4人PTを組んだ状態に成った。今は、ニルスが主導権を持っているんだ。君がPTを組んだからだ。PTリーダーと成って居るのも確認してくれよ」


 「うわ、ぼくがリーダーだ。項目が更新されて【解散】や【名を選んでPTから外す】が追加されたよ」


 そこの所の詳細を見ると、リーダーの許可なくPTを抜けられない、とある。

 ただし、リーダーが気絶した場合は他の者が操作可能と成って居る。

 また白いリンク光は、通常で仲間に異常があると、異常のある仲間とのリンク光は赤く成ったり、青く成ったりと色で状態異常を知らせる、とあった。


 更に仲間のスキル能力を共有する事が可能で、その能力は可視化されると書いてあった。

 そして、PT中は互いの攻撃で味方にダメージを与えたい時もリーダーの許可が必要とあったのだ。


 「え、ええっ! 何か……物凄いカッコいい! こんな事が出来るんだぁ」

 

 「そーだよ、ニルス! 誰が死にかけているか分かるから、回復スキルか薬を使用すれば、傷付いた仲間が回復する様に成ってるのさ。回復は誰がしても良いんだぞ!」


 ナーチが少し興奮気味で力説してくれた。

 だが、これはマジで優れものだよ。

 皆の体力が、ライフゲージと数値化で名前の関連項目として表示されている……。


 「み、皆。HP100って表示されてるよ……」

 

 「うおお、気付いたか! ニルス! それは、かなり精巧なリンクスキルらしいぞ」


 って、あれれ? 皆のスキルと僕のスキルが今は『?????』で伏せられている。

 こ、これは一体何だろう。

 気になったから、聞く。


 「ああ、それか。PT中に所持スキルを発動させたら、何スキルか明確に表示されるらしいぞ。アズさまの様にな。知られたくないスキルは、使用しなければバレないで済むとは聞いている。オレたちもまだ良く確かめては居ないんだ」



 こ、これって何か引っかかる嫌な機能だな。

 このリンク表示さえ無ければ。

 ようし、兎に角【解散】しときますか!


 「解散しまーす! みんなアリガトウ!」


 そう言って、初回クエを急ぐからと、僕はPTを解散した。

 解散時刻は、8時40分頃だったかな。



内容も投稿もゆっくりペースです。

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