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第十一話 冒険仲間

011

 どうやら、図星だった様だ。

 まったく何て安直なネーミングなんですか、ポンポ先生てば……。

 名前から能力も推測しやすいし……などと考えて苦笑していると、バブチが血相変えてぼくに迫って来た。


 

 「ニルス! 何で分かったんだ! 君は、もしかして透視系なのか? 能力見破れる系なのか!?」

 「そ、そうだぞ! オレ達が来た頃って周りに人影なんて無かったから、透視系なのか!? お前すげえの貰ったな……」


 バブチとナーチが興奮気味に一気に誤解して行く……。


 「あ、いやそうじゃ無いんだよ。ぼくのはそんな便利でカッコいいモノでは無くて……」


 その、弁明の声も空しくモグリンが目を見開いてキラキラさせていた。


 「俺は、身体の傷も多少は癒せる様だが、凹んだメンタル面を回復させられる何とも不思議な能力だ。ナーチは、美形に成れるだけじゃなく相手のハートを射止めるタイプに変身している様なのだ。魅了系で相手の動きを封じ、操る事もできる。バブチのは君が指摘した通りだ……それもかなり広範囲にな」


 マジかよ!って言うより、全員、絶対系じゃんか! 

 どーなってんのよ! ポンポ先生てば。

 最早かなりの確率で寝ぼけ続けていたとしか考えられなかった。

 

 少々、誤解を受けながらもパイセン達が凄いスキル持ちであると判明した。

 僕は余計に落ちこぼれた気分になって、彼らの笑顔から視線を外し、遠くを見つめる様に溜め息をついた。


 「……はあ。」

 「おいおい、ニルス。元気が無いみたいだな、急にどうしちまったんだ……」


 ナーチが、僕の曇った表情を見て声を掛けてくれた。

 他の2人も同様に気遣ってくれた。


 「誰かに意地悪でも受けたのか? 良ければ俺達が相談に乗るぜ!」

 「モグよ、お前の出番じゃねえかよ。ニルスを癒してやれよ……」

 「おお、そうだったな。ニルス、少し身体に触れさせてくれ……」


 ナーチがモグリンにそう促すと、モグリンは肉球の手でぼくの肩に一度、ぽん! と触れた。


 すると、何だか急に心と身体がポカポカ陽気に成るのを感じた。

 スーっとストレスが解消されて、スキル名の事がちっぽけな悩みだったと思えてきて僕は3人にこれまでの経緯を打ち明けて行った。

 

 モグリン達なら受け止めてくれると先程からも思っていたせいもあったけど、今なら打ち明けられると言う不思議なカムアウト感が芽生えたんだ。

 きっと、これがモグリンの能力の恩恵なんだろうと思った。


 

 「……そうだったのか。オレ達の早合点のせいで落ち込ませてしまっていたんだな。ポンポ先生の言い方にも問題あるし、そりゃ、悩むわな……そして、その絶対鈍感自体の能力の発現がまだか……」

 

 「ナーチ……」


 「そう気に病むな。絶対系だぜ、俺達は。自信持てよ!」

 

 「モグリン……」


 「僕達も、スキル名には以外とガッカリしていたんだよ。だけど、試した効果が最強っぽいモノだった為、ハイテンションで浮かれて居たって分けだ。ニルスもきっと凄い能力だよ。自身持って行こうよ」

 

 「バブチ……みんなの応援のお陰で自信が出て来たよ。ありがとう!」


 僕も高位スキルで最初は浮かれていたけど、冒険の仲間に勝る励みは無いんだと感じ入った瞬間だった。

 この日に来なければ、この出会いがあったかは不明だ。


 「ナーチが居れば、この世の全ての魔物の性別が判明するかもしんないね……」

 「だはは。バブチ……世の中にゃあな男の娘ってのが居るらしいぞ! ナーチの前では見た目が女子っぽくても、女装をしていようとも通用しないぜ!」


 バブチが壮大にワクワクする様な事を言うと、モグリンが更に助長する様に話に輪をかけて場を盛り上げて行く。

 

 「アッハッハッハ! モグリンが居れば酒場なんかで大男達にもモテモテで情報収集が捗る事、請け合いだぜ!」

 「だっはっはー! 何を仰るナーチさん、女子学園にだって潜入可能でしょ? アンタを拒める女子がこの世に居るなら見て見たいよ……」


 「……でもでも、欠陥スキルなんだよね。たまに失敗するし、あんまり調子にも乗れないんだ実際は……」

 

 二人の会話の腰を折る訳では無いのだろうけど、バブチが神妙な面持ちで言った。

 そう言えばそうだった。


 「ああ、そうだった。射程距離もあるみたいだ。モグリンの場合は、相手に接触が必要だからな……」


 射程距離、俗に言う範囲ってヤツだな。

 その他にもスキル能力によっては効果時間があるみたいだ。

 永遠に与えられる効果もあるらしいと、パイセン達は教えてくれた。


 いつまでもこうして、夢を見ながら語らい合っている訳にも行かない。

 僕達もヤンくんに負けない様に訓練所へと赴くのであった。

 いよいよ、初回クエストへの実技が行われる試験会場へ。


 パイセン達はともかくスキル能力が不明なまま、人生初の魔物との戦闘が始まろうとしていた。


 女子専門だが魅了系のナーチ、ペットの育成に厳しい制約のあるこの世界でモグリンは、全ての動物の毛並みを有し、触れた肉球で相手の心身のストレスを抜き取る。

 魔物にも有効なら手なずけるかも知れない。

 バブチは、広範囲に笑いのツボを突き、相手の戦闘意欲を抜き取れると言う美味しい能力だった。



 僕は一体どんな可能性を持ったのか……まだ分からないけど、先ずはスライムの討伐が先決と言う事で訓練所へ向かうのだった。


 

ゆっくりペースです。不定期です、読んで下さってありがとう。

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