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第十話 え? おいマジかよ!

ニルスは思い出話をしているから、ああだろう、こうだろうかと迷うのは何ですが、読み手が楽しめる言い回しにしたいのでとその旨伝えたから、たぶんニルス君がすっとぼけてくれているのです。

010


 何はともあれ、モグリン、ナーチ、バブチの3人は、ヤンくんと仲が悪いようでは無いようだった。

 話を聞かせてもらった分には損も無かった事だし。

 

 いや、逆にヤンくんがどんな人かをまだ知らない……。

 これからもっと良い関係に成ってくれたら楽しいだろうな。


 この人達なら、スキル名がヘンテコでも冷やかされる事も無いかも知れない。

 何しろぼくは打たれ弱いのだ。

 案外、あのポンポ先生のネーミングセンスからすると皆のスキル名も笑えるものかも知れないし……。


 いや勿論、スキル神官と言うぐらいだから、ポンポ先生が名付けたんだろうと勝手な想像で言ってるのだが。

 

 そう言えば、スキルを貰ったのは良いけど、自動的に発動するタイプでは無さそうに感じた。

 まだ、そうとは限んないけど……。

 

 思わず、「おい、ウソだろ!」などとパイセンの前で言ってしまうほどビックリしたにも関わらず、何も現れない。

 

 スキル名が地図上に表示される仕様だと知った時でも、どんなに肝を潰したことか。

 嫌すぎて、折角のPTも解散してしまったのだ。

 それだけの拒絶反応をしたにも関わらず、何も見えて来ない所を見ると、そうなのかもって感じたわけだ。


 何も見えて来ない……だって何となく防御タイプのスキルに思えたものだから。

 「絶対鈍感」ですよ……思い浮かべるのも恥ずかしい名前。

 どの様に発動するのか、使い方のマニュアルが知識図にまだ更新されていないから、見えて来ないんだ。

 

 スキルの能力が発現したなら、アズ様の<ソウル・クロス>にハッキリと反応が出るのだから。


 

 「なあ、ところでニルス。他人のスキルが気に成ったりしないか?」

 「……!!!」

 不意に、ナーチが訊ねて来た。

 

 僕が、密かに有する勇者関連の好奇心という名のバロメーターをじわじわと上昇させるかの様に、また一定の好感度を盛り込んで勇者候補生の成りきりアンテナをビビビとくすぐる言葉を選択し、共感を促すようにスキルへの興味に関する共有をさりげなく図ろうとする憎めない同世代の3人組。


 僕は、そんな冒険仲間がいつの日か出来たらいいなと思って生きてきたんだ。


 そんな冒険仲間……友達でありながら自分よりも先輩で面白味のある包容力を見せながら、同じ世界の場所に居て、自分とは多少の異なる観点を持ち、先に生まれて先に知り得た知識と経験を新たに出会った友と、より今を楽しむ為に親近して、僕の目の前に明かりを灯してくれる……そんな友達がずっと欲しかったんだ。


 ナーチの疑問符は、僕の疑問符でもある。


 それも当然さ……。

 

 僕らの様な子供が本来、おもちゃの様に持ち寄って、お祭り感覚でそのトレンドのランキングトークで盛り上がっていて良い代物じゃないんだ。


 勇者スキルってモノは。


 だけど、魔物が大幅に増えた為、討伐隊員の不足がこの世界の大きな社会問題と成っていて、本来なら存在していなかった新制度の候補生クラスの導入が、ほんの数年前から実施されたんだ。


 それでも、尚も魔物が爆発的に増え続けるものだから、候補生の入隊希望者の制限年齢を10歳にまで引き下げた結果、これまでは大人にしか持つ事が許されていなかった勇者スキルを僕達が、この身に具える事が叶っている訳なんだから、興味が湧くのも当然さ。


 「気に成りそうに無い人に、ソレを訊ねるナーチさまじゃあないですよね?」

 「お、おうよ! っと、そう来たか! へっへ……」


 PTを組んだ前後の僕の顔色やテンションの上がり具合を見ておきながらも、思わせぶりな質問をするナーチに対し、今度は僕が彼の好奇心のツボを押すような口ぶりで聞き返す。

 満面の笑顔を心の中で飼いながら、彼は表情の上ではその笑顔を小出しにする様に抑えめにクスクスと笑って、返事をした。


 「そう来るのなら、話が早いな。……実はな、オレ達すでに身に付けたスキルの効果を知ってしまったんだよ!」


 「え! そうなの?」


 「ああ、オレ達は今日ここに一番乗りだったんだ。早くから受けたスキルを3人で早々に発揮できる様に試していたんだ。スキル名は授かった時にメモ飲み込んだから、知れてるじゃん」


 

 そうか……。

 モグリン達は一番乗りだったんだ。

 僕みたいに単独じゃないから事を起こすのが早いな。

 って言うか、


「メモ飲んじゃたんだぁ……あはは」


 僕は、ポンポ先生に読み上げられてしまってテンション上がったり下がったりだったからな。


 そんな事を思い返していると、不意にナーチが自慢げにぶっちゃけて来た。


 「オレのスキル名は、『絶対イケメン』って言うんだ! 力を使うと飛びっきりの美男に成って、乙女心を持つ者をメロメロに魅了できるんだぜ!」


 

 「え? おいマジかよ!」


 

 うあ! またパイセンに向かって口走ってしまった! 

 いや、だってそのスキルは、僕があったらいいなって思ってた候補じゃんか……よりにもよって実在するとは……。


 「ニルス……俺のは、『絶対モフモフ』って言うんだぜ! ぬいぐるみ化出来ちゃう上に、可愛さのあまり誰もがハグをせずには居られなくなる癒し系能力だ! これ見ろ、肉球! ポンポン!」

 

 モグリンの手足にプニプニのピンク色の肉球が見えている。

 柏手を打つ様にポンポン!と音を立てると傍の2人が猫撫で声に変わり、うっとりしているのが分かった。


 

 「え? おいマジかよ!!」


 

 うあ! またパイセンに向かって口走ってしまった! 

 いや、だってそのスキルは、僕があったらいいなって思ってた候補じゃんか……よりにもよって実在するとは……、


「ナーチに続いてモグリンまで!」

 

 むむむ、待てよ。

 もしかすれば、もしかするよな。


 

 「……まさかとは思うけど、バブチって『絶対ウケル』てスキルじゃないよね? お笑いの神様の様に周りの者を大爆笑をさせて、腹抱えて笑い転げるとかの……」

 

 僕は、変な予感に駆られたものだから、思い切って訊ねて見ると、


 

 

 「……え? おいマジかよ──!!!」


 

 三人は、声を揃えて言った。


 呼吸もピッタリで、コントのように右手の平の裏拳を一斉に僕に向けて。

 つま先立ちで、目玉を剥いてツッコミ仕草をトリオで炸裂させていた。

 

不定期ですが完結目指して頑張っています。

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