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91話 出発

 俺は男達からもらった手紙を開いた。

 そこには、雑で汚い字で書かれた文が何行もあった。

 もう読む気は失せてしまったが、読まないわけにはいかないので俺は目を通した。


 『やぁ、リウス。俺の事は覚えているか? 覚えているに決まってるよな! まぁ、冗談はこれくらいにしといて。どうやらお前は随分と強くなっているようだな。見直したぞ』


 覚えているかって、逆に忘れるわけねぇだろ。

 嫌でも記憶から消えてくれない。


 それにしても、随分と強くなっているようだな、って書いてあるけど、あの戦場で一回もスーザック達に会っていないはずなんだけどな……。

 俺が気づかなかっただけか?


 そんな疑問を覚えつつ、もう一度手紙に目を落とした。

 

 『それでだ。スウサはあまり乗り気ではないようだが、俺はギルドに戻ってきて欲しいと思っている。どうだ? 嬉しいだろ? まさか、追放されたギルドに戻れるなんて思ってもいなかっただろう? 今ギルドは人手不足でな、お前みたいに強くなったやつを探しているんだ。だから、俺のギルドに戻ってこい。会えるのを楽しみにしておるぞ。では』


 最後の文字を読んだ瞬間、紙を両手でクシャクシャに丸めてポケットに突っ込んだ。

 

 あいつはそれだけ自分勝手なんだ。

 言いたいことが沢山あるが、今ここで言うのはやめておこう。

 実際にあって言ってやる。


 「あ! いたいた! リウス様!」


 横から急に声をかけられて顔を向けると、ミルマとヴァミアが走ってきていた。

 日頃から訓練をしているからか、ミルマは全く息が上がっていない。


 「聞きましたよ。住んでいた国に戻るんですってね」

 「ああ。ちょっと会いたい奴がいるからな」

 「なら、俺も付いて行っていいですか?」


 ミルマは笑顔でそう言った。


 「いいけど、どうして?」

 「リウス様が所属していたギルドが、どんなところか見てみたくて」


 見るのはいいが、何も得する事はないだろう。

 頭のおかしい奴らしかいないんだから。

 

 「私も行く。向こうで買いたいものがある」


 そう言い、ヴァミアは手を挙げる。

 俺1人で行くつもりだったけど、人数が多い方が暇しなくていいからな。

 

 「あと、さっきベルゼルフ様とすれ違いまして、どうしたのかと声をかけられましたので事情を説明したところ、ベルゼルフ様も付いて行くそうです」

 「ベルゼルフも来るのかよ」

 「はい。寝るのはやめた、と伝えろと言われました」


 ベルゼルフが興味を持たないような話だから、ついて行きたいなんて言うんだな。

 ベルゼルフが行って何をするのか気になるが、この村にある店をよく訪れているようだから、向こうにある店に連れて行ってやろうかな。


 「ていうことは、4人で行くっていうことで――」

 「勿論、私も行きますよ」


 俺の背後に突然現れたゼーラに、ミルマは驚いたのか少し後ずさりした。

 ヴァミアは全く無反応だ。


 「何か用事があるのか?」

 「用事なんてございませんよ」

 「なら、なんで付いてくるんだ?」

 「リウス様が行く場所には、必ず私がいますので」


 意味のわからない事を言い始めたゼーラは置いといて、行く人数は俺を含めて5人ってことか。

 1人から結構増えたな。


 「なら、5人だな。これ以上増えないよな?」

 

 俺は3人の顔を順番に見ていくが、もうこれ以上声が上がることはない。


 「各自荷物を求めて出発だ」

 


 

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