表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

90/93

89話 村

 敵味方関係なく、多くの犠牲者を出したあの戦いから数ヶ月たち、俺はファイアーウルフの村に住み、村の発展に力を入れていた。

 この村を守るために、さらに見張りは強化され、ファイアーウルフ達の戦闘訓練も行われるようになった。

 まあ、戦闘訓練の相手は俺なんだけどな。


 「あと一歩踏み込んでから攻撃しろ」

 「ぐはぁっ」


 頭を狙った攻撃を右に動いて避け、攻撃主に接近して腹に蹴りを入れた。

 その間俺の背中は当然あいてしまう。

 それを見ていた別のファイアーウルフが、炎を操って攻撃を仕掛けてくるが、全て触手で捕まえて消滅させる。


 「それズルくないすかぁ!」

 「確かにな。だが、敵はそんなこと言っても手は抜いてくれない。もっと、仲間と連携を取ることだな」


 そのまま触手を伸ばし続け、文句を言った奴の腕に絡みつけさせて地面に叩きつけた。

 

 「俺の勝ちだ。しっかり反省をすることだな」


 俺の周りで倒れている奴にそう言い放ち、俺はその場を後にした。


 結局あの戦いは、ヴァミアが撤退を指示したため、あの大勢の兵士達はすぐさま撤退していった。

 すぐにでも、あの場から逃げたかったのだろう。

 ていうか、今思えば俺がいたギルドの奴らに会わなかったな。 

 不思議だな。

 そんな事はどうでもいいが。

 

 そういえば、五大魔獣の氷結の白狼と時操の金鳥に敗北、と言う形になっているらしい。

 この情報は、ヴァミアから伝えられた情報のため、間違いはないだろう。

 スハンが死んだせいで、結構大混乱が起きているようだ。

 それで、その情報を伝えたヴァミアだが、あの戦いの後ギルドを抜けて、この村に戻ってミルマと共に住んでいる。


 現在この村は、獣人の国から支援を受けており、良好な関係だ。

 そのため、よくグーレやミミィが遊びにくるのだが、その度にグーレにファイアーウルフ達が怯えているのでどうにかしてほしいとは思っている。

 それとは反対に、ミミィは可愛がられている。

 俺も可愛がっている。

 ちなみに、ファイアーウルフ達を救出した後、獣人の国に戻っていったエンファだが、戦いの後仲間達と旅に出ると言い、魔獣の乗ってどこかへ行ってしまった。

 時々帰って来るらしい。


 俺は歩くのをやめて、所々置いてある椅子に腰を下ろした。

 周りには、まだ小さな子供のファイアーウルフ達が走り回り、追いかけっこをしている。

 買い物をしてきたのか、手には食材を持って家に帰っている者もいる。


 「不思議だな……」


 もし、カロスが1人で大勢の兵士たちを相手にしていなかったら、今俺の視界にいる者が殺されていたかもしれない。

 向こうに走っていった子供達も、今はいなかったかもしれない。

 そう考えるだけで、なんだか不思議な気分になり、カロスの行ったことの凄さが理解できる。


 ゼーラが集めたカロスの魂は、この村の村長の家で保管されている。

 そのせいか、初めてきたこの村に来た時よりも、村長の家の周りに多くの人が集まっている。

 それが村長の負担になっていると思い、俺は一度保管場所を変えることを提案したのだが、


 「とんでもない! この村の者を救ってくださったカロス様の魂と共に住めるなど、光栄のほかありません!」


 と言われたので、場所はずっと変わっていない。


 「美味しかったよ。また来る」

 「ありがとうございました〜」


 すぐ近くにある店からそんなやりとりが聞こえ、その方向に視線を向けるとベルゼルフが店から出てきていた。


 「リウスじゃないか。訓練は終わったのか?」

 「ああ。すぐに終わったよ」

 「流石だな。多少はましになったのか?」

 

 ベルゼルフは俺の隣に座って、足を組んだ。

 

 「多少はましっていうか、結構強くなっているよ。前に比べたら本当に成長している」


 最初は酷い、という言葉しか思い浮かばなかった。

 全く連携は取れていないし、稀に連携が取れていても、個々が弱すぎるため全く意味がない。

 そんな感じだった。


 だが、今は全く違う。

 今でも俺にはすぐに倒されるが、攻撃の一撃の重さや連携が凄く成長している。

 今の状態は、フェイの戦闘能力と同等、もしくはそれ以上と思っていいだろう。

 フェイがいたらなんて言っていなんだろうな。


 素直に褒めていたか、まだまだですわ、とか言うのかどっちなのか気になるな。


 「お前が褒めるとは、よっぽど良くなったのだな」

 「俺は褒めるのがそんなに珍しいか?」

 「珍しいに決まっているだろ。褒める内容は、今初めてお前の口から聞いたぞ」

 「そうだったのか」


 全く意識していなかったが、どうやら俺は褒めていなかったらしい。

 

 「その言葉をファイアーウルフ達に聞かせてやるんだな。褒める事も大切だぞ」


 じゃあな、と続けて椅子から立ち上がると、俺に背を向けたまま手を振って歩いていった。


 「どこに行くんだ?」

 「帰って寝る」

 

 俺は大きな声でそう質問したが、大した返事ではなくて真顔になる。

 あいつは本当に五大魔獣なんだろうか。

 寝てばっかに思える。


 ベルゼルフは、昔から洞窟に住んでいたらしく、寝心地が恐ろしいほど悪かったようだ。

 この村に来て俺と見て回っていたら、急にここに住みたい、とか言い出し新しい家を建てて、現在この村に住んでいる。

 

 「俺も戻るか」


 両手を椅子について、力を入れて立ち上がって服の皺を伸ばす。

 

 今日はちょうどいい気温だ。

 俺の目の前に広がる、この平和な場所。

 この平和が乱される事なく、ずっと続いて――


 「リウス様」

 「なんだ」


 俺の真横に突如現れたゼーラは、顔に笑みを浮かべながら立っていた。

 

 「もう驚かないのですね」 

 「何回もやられれば流石に耐性がついた。それで、何の用だ?」

 「はい。それが、見張りをしていたものが侵入者を捕らえたそうで、リウス様に用があると言い続けているようです」

 「俺に?」

 「はい」


 一体そいつは、俺に何の用事があるんだ。

 頼むから問題を持ってこないでくれよ。

 

 しかし、そう思っても行くしかない。


 「仕方ない。すぐに向かう。場所はどこだ」

 「この村の入り口です」

 「わかった。ゼーラはそいつが逃げないように、俺が向かうまで見張っておいてくれ」

 「承知いたしました」


 ゼーラは笑みを浮かべたまま、綺麗にお辞儀すると音を立てずにその場から消えていった。


 俺の頭の中で嫌な想像が色々膨らみながら、目的の場所まで進んでいった。

 


 

 


 





 



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ