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84話 信じない

 「ベルゼルフ、今日で我は死ぬ。お前と過ごした日々は、楽しかったぞ」


 剣と剣が激しくぶつかり合い、甲高い金属特有の音が鳴り響く。

 拳と拳がぶつかり合い、戦場に鈍い音を響かせる。

 鼓膜が破けるのではないかと思うほどの爆音が鳴り響き、辺りを一瞬にして明るく輝かせる爆発が空中で発生する。


 だが、この音も、光も、何もかも、ベルゼルフには聞こえない。

 見えない。

 感じない。


 ただ唯一、カロスだけ視界に入る。


 声が出ない。

 出そうとしているのに、声が出ない。

 さっきとは違う。

 今は喋りたいのに、喋れない。

 

 目がカロスから離れない。

 周りを警戒しなければいけないのに、離れない。

 

 意味がわからない。

 信じたくない。

 その冗談はきついぞ、カロス。


 「何を言っているんだ。死ぬだと? 何をふざけたことを。お前は、五大魔獣なのだぞ」

 「五大魔獣でもいずれは死ぬ」


 そんなことは分かっている。

 この大地に産まれ落ち、生きる物はいずれ死ぬ。

 

 だが、まだだろう。

 カロスはまだ死ぬべきではないだろう。

 まだ、生きることが許されているのだぞ。


 「我は寿命を代償に、この圧倒的な力を得た。だから死ぬのだ。だが我は、後悔は一切していな――」

 「カロス……?」


 突然名前を呼ばれたカロスは、自分に背後にいた人物の姿に目を見開いた。






 体のあちこちが痛いが、今はそんなことどうでもいい。

 とにかく、今はカロスの所へ向わなければならない。


 激しい音を頼りに、カロスがいる場所に向かっていった。

 さっきいた場所から巨大な氷が見えたから、恐らく今から向かう場所に居るとは思うが……頼むから無事でいてくれよ。


 頭や腹から血が滴れて、地面にピチョッと音を立てながら落ちていく。

 体にだいぶダメージを負ってしまったせいで、うまく回復することができなかったのだ。


 まだ戦わないといけないから、多少なりとも力を温存しておかないとな。


 頭から流れる血を腕で拭きながら進んでいると、何故か急に音がしなくなった。

 もしかしたら、もう決着がついたのかもしれない。


 目の前に生える、俺よりも背に高い草をかき分けて、さらに進んでいく。

 草の間から向こう側の光が見えて、少しだけ歩くスピードが速くなった。

 この草を抜けたらカロスに会える。

 でも、もしカロスが負けていたら?

 いや、今はそんなこと考えるな。

 カロスやミルマが無事でいることを考えろ。


 そして、右手で最後の草をかき分けて、ようやく抜け出し見えた景色。

 そこには、ミルマや別に場所にいたはずのゼーラ、そして俺が見たことのない2人に囲まれる、漆黒の体毛を靡かせる1匹の狼だった。






 拳と拳がぶつかりあい、空中で爆発が音を奏でる。

 グーレの拳がエティラの顔に向かっていくが、それも難なく受け止める。


 「クハハハ! やはり面白いな! 殺し合いは何故こんなにも面白いのか!」

 「同感だ。だが、私はお前との殺し合いが1番つまらない!」


 グーレは体をその場で回転させて、鞭のようにしなる足が相手に横腹に食い込んでいく。

 今度は、その蹴りを受け止めることができずに、エティラは一瞬ふらっとなる。


 「今の攻撃は効くねぇ」

 

 だが、それでもまだ余裕はある。

 顔に笑みを浮かべながら、同じように蹴りを返す。

 その蹴りを腕で受け止めるが、力の差には勝てずに押されて吹き飛ばされていく。


 なんとか体を捻って、体勢を立て直してエティラに向き直る。

 

 「いやいや。貴様は軽いなぁ。うーん、遊ぶのはもう飽きたな。これで家族の所へ送ってやろう。風捻曲剣(エアブルバル)

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