表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

82/93

81話 始まり

 この命燃え尽きるまで、我は必ず皆を守る。


 ヴァミア、ミルマ、ベルゼルフでグラファに攻撃を与えて行くが、やはりどうしても劣勢になってしまう。

 ベルゼルフが止めることの出来る時間も短くなって来た。

 

 まだなのかカロス……!

 これでは、いつまで持つか分からない……!


 ベルゼルフは頭の中で必死に考える。

 どうすれば目の前にいる化け物にダメージを与えていることができるか。

 だが、全く答えが出てこない。

 出てくるのは、“敗北”の2文字。


 えぇい! 

 馬鹿なことを考えるな!

 私たちはカロスが来るまで時間稼ぎをするのみ!

 カロスの放つ技で必ず仕留めるために……何の音だ?

 

 一瞬、グラファから意識が逸れるがすぐさま戻る。

 

 この男は……鐘の音か?

 

 鳴り止むことのない鐘の音。

 ゴーン、ゴーン。

 と、不気味で、しかし美しい音がどこからか聞こえてくる。


 ヴァミアとミルマに目を向ければ、グラファに攻撃を仕掛けつつも少しだけキョロキョロと見ている。


 だが、怒り狂っているグラファには聞こえていないようだ。

 相変わらず馬鹿みたいな力でベルゼルフ達の攻撃を跳ね返していく。


 何故鐘の音が……いや! 今そんなことはどうでもいいのだ! 今はコイツに少しでもダメージを――


 「ワオオオォォォォォォォンンンッッッ!!!」


 周りにいる者の思考を強制的に止めるかのような遠吠え。

 この遠吠えは、間違えなくカロスのものだ。


 恐らく準備が整った合図なんだな! 

 これでやっと時間稼ぎも終わりだな。


 ベルゼルフは少しだけ心を休め、カロスがいるはずの岩へと視線を向ける。


 ズシリ、ズシリと音を立てながら巨大な生物が少しずつ姿を現す。


 銀色の毛を靡かせ、金の鋭い目を持つ氷結の白狼に相応しい姿――ではなかった。

 

 「え……? カロス……どうしたんだよその姿ぁ……」

 「カロス様の毛の色が……」

 「……」


 岩から姿を現したのは、誰も知る氷結の白狼の姿ではなかった。

 代わりにそこにいたのは、体がさらに巨大化し、銀色の毛の面影が全くない漆黒の毛に、血に染まったような赤い目を持つ狼だった。


 一体何が起こったのか、ベルゼルフも、ヴァミアも、ミルマも理解することができない。

   

 「あとは我に任せてくれ」


 喉の奥からグルグルと威嚇するような音を出しながら、グラファに近づいていった。


 あまりの驚きに、誰もこの場から動くことはできない。

 たった一人を除いて。


 「氷結の白狼ィィィィ!!!」


 カロスを目の前にしたことで、グラファの怒りはさらに増していった。

 

 指を鳴らして一瞬でカロスの背後に回る。

 

 俺を馬鹿にした、努力を否定したお前を! 

 今必ずここで殺す!

 

 カロスの背中に触れるために、右腕を伸ばしてさらに接近する。


 カロスとグラファの距離は、もう数メートルしかない。

 この距離ではもう反応することは不可能だとグラファは考えた。


 俺の腕に触れれば、今までの倍以上の重力がお前を襲う!

 これでお前は死ぬのだ!

 俺も努力否定したことを後悔すればいい――

 

 「今の我に、そんな攻撃は通用しない」

 「あぇ……?」


 グラファは意味がわからなかった。

 カロスの背後に接近して、あと少しで背中に触れれる距離まで接近したのに、何故か気付けば自分の腹を漆黒の氷が貫いていたのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ