76話 努力
「え……? 何でお前がいるんだ?」
グラファの隙をついて背後から蹴りを入れて、悪魔らしい笑顔を浮かべているのは、万を超える敵を相手にしているはずのゼーラだった。
「なぜって、もう終わったからですよ。でも正確に言えば、勝手にやり合ってくれているので私のすることはなくなっただけなのですけど」
「勝手にやり合う?」
「いいのですそんなことは。それよりもあのお方強そうですねぇ。戦わなくてもわかります」
「さっき蹴ってた癖に……」
一方的に蹴ったのにも関わらず、あの方は強いという煽りを聞いてグラファは顔に血管を浮かばせる。
「悪魔の分際で俺のことを勝手に語るな。まぁ、ただ俺が殺す人数が増えただけだがな」
「言ってくれますね。なら私も……とその前に」
「なんだ」
「気を付けた方がいいですよ」
何を?
と、問おうとした時には既に遅かった。
「くはぁ……!」
カロスの足元から伸びる、直径1メートルはある氷の柱が無惨にも背中から貫いていた。
クソ……!
どうなっている!
俺が長い時間をかけて作り上げた虎はどうなってるんだ!
氷のせいで体が固定されているため、首だけを後ろに回す。
俺がどれだけの時間をかけてあいつを作り出したと思っているんだ!
俺の努力の結晶がそんな簡単に――
だが、世界は努力など知らない。
グラファの目に映るのは、横腹から血を流すカロスと時操の金鳥、ベルゼルフだけだった。
「蒸発させてやったぞ」
「何で1人でやったみたいになっているんだ。私も手伝っただろうが」
負けたのか……?
俺の努力が……負けたのか……?
嘘だろ……五大魔獣でさえも相手が出来るほどの完璧な出来なはずだったのに!
俺は生まれつき強かった。
ガキの頃から誰と喧嘩しても負けない。
大人を相手にしても負けることはなかった。
だから、俺はよく言われた。
“天才”と。
天才と言われて悪い気はしない。
だが、俺にだって出来ないことはある。
だから俺は、出来ないことを出来るようになるために子供ながら必死に努力した。
でも……
『見て見て! これ僕が作ったの!」
『凄いね! やっぱりグラファは天才だね!』
どれだけ努力しても“天才”で片付けられる。
俺の頑張りは……?
俺のやってきた時間は……?
全てなかった事にするのか?
全て“天才”で片付けるのか?
俺はそこで何かが切れた。
努力しても無駄なんだ。
どれだけ努力しても、それはなかった事にされるんだ。
「この水で作った雑魚で我を殺せると思ったのか」
「は?」
コイツは何を言う?
さらに俺の努力を否定するのか?
「こんなすぐに作れるような物で、我を殺せるなどと思い上がるな」
こんなすぐに作れる物……?
ふざけるなよ……!
そうやってすぐに貴様らは努力を否定する!
表面しか見ず、裏側は見ないくせして……!
だから俺は故郷にいた奴ら全員を殺したんだ。
俺の努力をわからない奴は生きている資格はない。
貴様ら全員……俺が殺す。




