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72話 更なる恐怖へ

 地上で戦闘が始まった頃、上空では魔王同士の戦いが続いていた。


 鳴り止まない轟音と共に、空中で衝撃波が発生する。


 「破乱礫陽(デストロイ・ロウ)


 グーレが右手を上に上げると、直径10メートル程の炎の球体が浮き上がっていった。

 

 「おいおいグーレ、もしかして貴様は私にそれで攻撃をするつもりか? この美しい私に顔に傷でも付いたらどうする――」

 「死ね」


 炎の球体は、グーレの手から離れると、さらに膨張していきながらエティラに迫っていく。

 だが、一向に慌てる気配はない。

 それどころか落ち着いているようだ。


 「全く。美しさの微塵もないな。貴様の攻撃は」

 

 そう煽るように言いながら、目の前に迫る炎の塊を握った拳で突くと、まるで花を咲かせるかのように散っていった。


 「黙れ。お前に美しさなど元からない」

 「何を言っている。私は美しい。貴様の家族だって……美しい死に方だっただろう?」

 「貴様ぁ!!!」


 エティラの言葉が、グーレの心に怒りの火をつけた。

 

 「今ここで絶対に殺す!」

 「貴様になど私は殺せない。それともなんだ? 貴様も家族と同じように、私に殺されたいのか?」


 エティラは顔にかかる髪をかき上げで、不気味な笑顔をあらわにした。





 「これは雑魚ばかりですねぇ」


 ゼーレは、四方八方から剣を構えて囲む兵士達に飽き飽きしていた。


 「なんだよこいつ……! 強すぎだろ!」


 ゼーレの周りには、余裕をこいて攻撃しに行った者が白目を剥いて倒れていた。


 「何をビビってんだ! こっちは万を超える数がいるんだぞ!」

 「そうだな……!」

 「一気に叩けば何も問題はない!」


 やれやれ、これだから雑魚は……。


 ゼーラは頭を押さえて小さなため息をついた。


 「もう雑魚の相手をするのは飽きたので、勝手に貴方達で殺ってください」

 「は? どういうことだよ!」

 「この数の差で勝てると思うなよ!」

 「別に私はこの数の差でも余裕で勝てますが……それはつまらないですからねぇ……」


 両腕を広げて不気味な笑みを浮かばせる。


 「それでは始めましょう。操闇思誘(シャドークロム)


 狂気に塗れた声が空に響き渡り、恐怖する兵士たちをさらに更なる恐怖へと突き落とした。


 「な、なんだこれは!?」


 ゼーレの足元からウネウネと動く巨大な影が伸びていき、兵士たちの足元へと侵入していった。


 「下がれ! 早く下がれよ!」

 「一回下がれっつってんだろ!」

 「もたもたすんじゃねぇよ!」


 突如現れた謎の影に、皆顔色を変えて、我先に逃げようとするばかりに押し合いが始まっていた。


 「クフフ……皆さんさっきの威勢はどうしたのですか? でも逃げても無駄ですよ? すでに侵食は終了している」

 

 そしてゼーレは、笑う。


 「イッテェな! 押すなよ!」

 「前の奴ら早くあいつ殺せよ!」

 「たった一人相手になに手間取ってんだよ!」

 「はぁ? ろくに前に出てきてねぇくせに何言ってやがんだよ!」

 「お前黙らねぇと殺すぞ!」

 「なんだ……あぁ?」


 怒声を上げていた兵士は後ろから突如肩を叩かれて、怒りを露わにしながら振り向いた。


 「なんだよ」

 

 だが、肩を叩いた兵士は下を向いたまま一切口を開かない。

 まるで意識が無いかのように。


 「おい、お前俺の肩叩いておいて何だ……えぁ……?」


 何も答えない兵士にさらにイラつき、相手の肩を強く握った瞬間、腹に燃えるような痛みが走り弱々しい声を出した。

 痛みを覚えた兵士は、原因を探るためにゆっくりと下を向けば、銀色に輝く剣が腹を貫いていた。

 


 


 

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