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71話 巨水の滝槍

 「ぐぁぁっ! 貴様ぁ……よくも私の顔を傷つけたなぁ!!!」

 「散々自分の手を汚してるくせしてよく言うな」

 「黙れ! 私は自分の所有物を壊してるだけだ! 自分の物壊して何が悪い!」

 「その考えがおかしいんだよ」


 俺は少しの隙の間に、腰から尾をはやして地面に叩きつける。

 

 「貴様、それは何だ」

 「そんなに知りたいなら確かめさせてやるよ」


 尾を横に振ると、セハンに向けて無数の棘が飛んでいった。

 さらに、風を操って棘の威力を倍増させる。

 この棘の威力なら、どんな鉱石でも破壊することが出来る。

 これをくらえば、セハンでさえ致命傷を負うだろう。


 「そんな棘如きで、私を殺せるとでも思っているのか! 水壁の防空(ウォーター・ガード)


 だが俺の棘がセハンに到達する前に、突如現れた水の壁が邪魔をして地面に落とされた。


 「おいおい……普通の水程度じゃ、びくともしないはずだぞ……」


 やはり国を支配できる力を持っているだけはある。

 あの棘の威力を一瞬で殺せるということは、相当水の扱いに慣れているのだろうな。

 これは面倒な相手だな……。


 「お前、ヴァミアのことを所有物だと言ったな」

 「ああ。それがどうした」

 「俺はヴァミアが魔王に匹敵すると聞いた。それなのに、どうしてお前は従わせることが出来る」

 「フッ……、そんなの決まっているだろ。それ以上の力でねじ伏せるだけだ。あいつは、私がまだこの地位に就いていない頃、森の奥で捕獲したのだ。最初は殺すつもりだったが、どうやら人型魔獣で、さらに相当な強さだった。だから私の所有物にしたのだ」

 「そうか。教えてくれて助かるよ」


 俺は全身を魔獣の力で固めた後、腕を岩のように変化させていく。

 

 別に体を変化させなくても使うことはできるが、やっぱり変化させた方が使いやすい。

 

 「お前のその能力……実に興味深い……」

 「俺が興味を持たれるなんて嬉しいな」

 

 軽く冗談を吐きながら、足に力をためて一気にセハンとの間合いを詰める。

 二重に硬化させた腕を、みぞおちを狙って打ち込むが今度は余裕を持ってかわされる。


 「お前はまだ動きが遅い。巨水の滝槍(ウォーター・ガバル)


 セハンが腕を前に伸ばすと、手から水が流れていき、一本の槍を作り上げた。

 そのまま、腕を大きく後ろに振りかぶると、俺に向けて槍を放った。


 俺は、すぐさま目の前に岩の壁をを作り上げて防御に徹する。

 

 あいつが使う攻撃は、そこら辺の奴らの攻撃とは比にならない。

 だからより防御を固めなければならない。


 俺は足元から植物の蔓を生やして、それを槍に向けてどんどん伸ばしていく。


 まず最初に、あの蔓を槍に巻きつけて威力を削る。

 その後に、俺の目の前にある岩に衝突させて槍を完全に消滅させる。

 これが俺の作戦だ。


 鶴は予定通りにやりに絡みついて、水を吸収していった。

 

 よし、これで絡みつかなかったらどうしようかと思ったが、その心配は不必要だったようだ。

 槍はそのまま俺のところに向けて飛来してくる。

 

 本当はもう少し削っておきたかったけど、多分いけるだろう。

 

 蔓に巻きつかれ、威力を少し失った水の槍は、俺を防御するために作り上げた岩の壁にぶつかり、そのまま液体になり空中に分散して――いくことはなかった。

 

 「は?」


 本来ならすでに消滅しているはずの槍は、分厚く硬い岩を簡単に貫き、気付けば俺の心臓のすぐ正面に、()()はあった。


 

 

 

 

 

 


 


 

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