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69話 死の恐怖

 「どうせ目的果たせなかったら、俺たち殺されるんだぜ?」

 

 大柄の男が放った言葉に、マラオス王国の者達は皆顔に緊張が走り、動きを止めた。


 「俺たちはもうどうしようもねぇだろ。ヴァミアでも圧倒されるようなヤツに、さらにそいつを従えるヤツがこの場にいる。俺達が加わって戦ったところでこの状況は何も変わらない」

 「だけど――」

 「どうせこのまま任務を果たせなかったらよぉ、俺達は殺されるんだろ? 役立たずってな」


 さっきからこいつは殺されるって言ってるけど……まさか本当に殺されるのか?

 だが誰にだ?

 正直自分の国のことなんてどうでも良かったから、国王の名前くらいしか俺は知らないんだよな。


 「でも私嫌だよ……死ぬの……」


 ゼーラに捕まえられていたマナという女は、頭を抱えて地面にしゃがみ込んだ。


 「任務を断ったら殺される。任務を達成出来なかったら殺される……。もう私達は死ぬしかない!」


 マナの恐怖の絶叫が戦場に響き渡る。

 いつもは騒がしい覇獣士でさえ、黙ってしまう程の。


 「殺されるって、誰にですか?」


 突然現れた人物達に、ヴァミアの元へと行き損ねた

ミルマは、手を挙げて質問をした。


 「そんなの決まってるだろ。セハン様だ」

 

 ミルマの質問に、代表して大柄の男のオウガスが答えた。


 「何か聞き覚えのある名前だな。セハン……」

 「セハン様は国王様の側近だ。恐らくだが、マラオス王国で最も強いお方だ」


 まじか……そんな人物が居たなんて全く知らなかった。

 でも興味が無かったのもあるし、もしかしたら公の場に出てきてなかったのかもしれないな。

 だけど上位に立つ者だけが会える、みたいな。


 「だから俺達は最善の策を選ばなくてはならない。俺にとったらなぁ、お前達を殺すっていうのは今のところ最善だと思っている」

 「嫌だ……私はもう……戦いたくない……」


 地面に頭を抱えてしゃがみ込んでいるマナは、小さな声で言葉を吐き出した。


 「でも戦わねぇと、お前殺されるぞ」

 「どうせ戦ったって勝ち目なんかない……! 逃げてもどうせ殺される……! なら私は――」

 「なら私は……どうするんだ? マナ」

 「え……?」


 しゃがみ込んでいるマナ。

 そして、そんなマナの頭に軽く手を乗せる漆黒の長髪を靡かせる男。

 

 「セ……様……」

 

 でかい態度をとっていたオウガスでさえ、その人物を見た瞬間ボソッと何かを呟いた後、跪いた。

 それを見た他の者も、続いて跪く。


 「そんな驚くことでもあるまい。それでマナ、なら私はどうしたいんだ?」

 「それは……」


 涙を流し、恐らく恐怖で体を震えさせる。

 

 「戦えないなら、お前はもう必要はない」


 長髪の男は腕に力を入れた。

 その力が前腕へと伝わっていき、手のひらに伝わる。

 そして、マナの頭へ伝わっていく。

  

 仲間が殺されそうになっているのに、跪いている者達は、誰一人として動かない。

 皆わかっているのだ。

 動いたら、自分が殺されると。

 

 次第にマナの頭に伝わる力は、強さを増していく。


 「戦えない者は、要らない」

 「いやだ……」


 頭からギシっと音が鳴り、

 

 「死にたくない……」


 空中に綺麗な紅の花を咲かせるか如く、マナの頭は砕け散った。


 

 

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