66話 駆
「いいねいいねぇ〜。生きがいいやつは殺し甲斐があるからなぁ」
「黙れ」
剣に豪炎を纏わせながら、ヴァミアは相手の首目掛けて斬りかかる。
だが……
「お前、動き遅いね」
グラファは首を少しだけ後ろに引いて、豪炎の剣を躱すとそのまま右足でヴァミアに腹に蹴りを入れた。
「がぁっ……!」
「これで……あ?」
不気味な笑みを浮かべ、苦しむヴァミアを見下ろしていたグラファは突如黒き炎に包まれた。
「ちっ! なんだこれは!」
苦しむヴァミアから出る黒き蛇が、グラファの体に噛み付いていた。
それを見て、痛みで汗を流しながらヴァミアは笑った。
「ふっ……貴様、油断していたな……」
「黙れ! この死に損ないが!」
ヴァミアに言われたことが気に入らなかったのか、顔に血管を浮かべて怒鳴り声を上げると、目の前に無数の光を出現させた。
「死ねぇ!」
至近距離で放たれた光を、ヴァミアは目で追えないほどの剣技で消滅させていくが、流石に全てを消滅させることは不可能だった。
消滅させきれなかった光は、ヴァミアの体に付着すると、どんどん光を膨らませていき、爆発した。
「ハハハハハッ!」
痛みで声が出ず、地面に横たわりもがき苦しむ姿を見て、グラファは大声で笑った。
その時、今だ岩の上にいるマナとダオクは顔を青ざめさせていた。
「ねぇ……ヴァミアやられちゃってるけど……」
「これ自分たちも行った方がいいだろ」
「でも……死ぬよ?」
「……!」
マナの発した“死"という言葉に、ダオクは立ち上がらせた体を少し震えさせて、歯を食いしばった。
「でもここで行かなかったら何の役にも――」
「別にいいじゃん……何の役に立たなくても……。別にこのまま逃げちゃえばいいし」
「え? 何を言って――」
「死にたくないもん!」
突然大声を上げて、ダオクに向けた顔は、涙で濡れていた。
「私はまだ死にたくない! 国王のせいで仕方なくここに来てるだけ! ここに来る前にお母さんに最後に言われた言葉何かわかる? 死なないでね、って言われたんだよ……お母さんとの会話をこれで最後にしたくない!」
「マナ……」
「ハァ……ハァ……」
「どうだ? 痛くて苦しいだろ? でも安心しろ。俺がトドメを……なんだ!?」
トドメをさすためにグラファが足を前に出した直後、氷で生成された鎖にとって体を拘束された。
「そいつを殺されるのは我が困るのだ」
「狼の分際で俺に何を――」
「ヴァミアよ。我とベルゼルフを圧倒しておいてなんだその姿は。お前の兄ならそんな事では倒れないぞ」
「……! なぜ兄のことを知って――」
「もういい。貴様らマジックストーンを出さないなら。ここで死ね」
ここにいる全ての者を黙らせるかのように、魔王エティラは上空から冷たく鋭い声を放ち、闇のように黒い一本の槍を手にした。
そして槍を持つ腕を大きく後ろに引き、前に突き出すのと同時に槍を放った。
鋭い音を響かせながら地面に向かう槍は、さらに加速していき――木っ端微塵に砕け散った。
「危なかったな。私が壊していなかったら此処も吹き飛ばされていたぞ」
「ああ……助かったよ」
俺たちは森を駆け抜けること数分、森を抜けて目的の場所に到着した時、空中から地上に向かって槍を投げようとしているやつを発見した。
グーレはそいつを見た途端、不気味な笑みを浮かべると近くに落ちていた石を拾って槍目掛けて投げたのだ。
高速で落下していた、しかも細い槍にそこら辺の石を投げて当てるとかどういうコントロール力をしているのか。
「私の槍に何を――貴様は……!」
「その驚きの顔が見れて嬉しいよ。エティラ・テンス!」
グーレは地面が陥没するほどの力で蹴ると、エティラというやつに向かって行った。




