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62話 本当の顔

 幕の外の世界とは切り離され、時間の進みが遅くなったこの場所で、カロスはもう時間など気にすることなく戦闘を継続していた。

 カロスとベルゼルフ対万を超える敵。

 普通に考えれば圧倒的に不利な状況だが、それでもカロス達はそうはならない。


 「あの時操の金鳥が厄介すぎる……。 とにかくあいつをどうにかしなければ……」

 

 魔王に匹敵するほどの強さを持つヴァミアでさえ、カロスとベルゼルフのコンビネーションは恐ろしく厄介なものだった。

 だが、それでもヴァミアは焦りを感じていない。


 グードラのように、ベルゼルフにとって圧倒的に格下の場合、自ら力を解いて自由に動けるようになることはできない。

 だが、ヴァミアはベルゼルフと同等、もしくはそれ以上の力を持っているため、すぐにベルゼルフの力を解いてしまうことができる。


 「くっ……! アイツ全然動きが止まらない……!」

 「いや、ベルゼルフの攻撃は効いている。だが、やつは一瞬にして力を解いてしまっている」

 「ならどうしたら――」

 「来るぞ!」


 ベルゼルフの言葉を遮り、カロスは氷の鎖を生成する。


 「止まれ!」


 ベルゼルフの力に、素早い動きが静かに止まるが、それも一瞬の間だ。

 すぐさま力を解かれて、次の攻撃が来てしまう。


 もう、すでにカロスとベルゼルフは気づいていた、というよりも、確信していた。

 今目の前にいる者が、魔王に匹敵するほどの力を持っていることを。


 五大魔獣が2体で相手をしても、全く倒すことが出来ないのが何よりもの証拠だ。


 ヴァミアの動きが止まった瞬間に、カロスが生成した氷の鎖で手足を縛りつけた。


 「くっ……」

 「流石のお前でも、この我の鎖からは逃げることは出来まい」


 氷の鎖はヴァミアを捕らえたまま、ウネウネとまるで生きているかのように動き回り、何度も地面に叩きつけた。

 だがそんな攻撃は、当然ヴァミアに効くことはない。

 まるで何も問題が無いかのように、拘束されたままの状態で剣を一閃すると、金属の何十倍もの硬さもある氷を木っ端微塵に砕け散らせた。


 「カロスの氷が……」

 「まさかここまでの力の持ち主とは……」


 自由になった身で、ヴァミアは少し下を向くと、右手を仮面にかざし、そして下にずらした。


 「え?ヴァミア仮面取るつもりなの?」

 「マジで……ていうか、まだ誰もヴァミアの素顔見たことないよね?」

 「多分……」


 崖の上から一切動こうとしないマナとダオクは、ヴァミアが取った行動に驚きを隠せずに、少し興奮気味になった。

 それもそのはずだ。

 ヴァミアと同じパーティーメンバーでさえ、あの仮面の下の顔を見た者は誰一人としていないのだから。


 五大魔獣を圧倒する力を持っているとは思えないほどの華奢な手でつつまれる仮面は、少しずつ下にずれていき、そしてついに『顔』が明らかとなった。


 仮面が地面に落とされ、顔が明らかとなった瞬間、辺りは今までに無いほどの緊張感が漂った。

 それはカロスでさえ感じたことがないほどの。


 「あの顔は……」

 「なんだ? カロスはあの顔に見覚えがあるのか?」

 「いや、我はあいつを知らない。なのに、何故か知っているような気がするのだ……」


 我はあいつを、ヴァミアを知らない。

 だが、ヴァミアの()を知っているような気がするのだ。


 一切の汚れも受け付けないような白い肌に、ヴァミアが操る炎とは真逆の、たった一睨みで空気を凍えさせてしまうぐらいの美しく冷たい青き目を持つ、人物。


 今この場にいる者全員が、素顔を見たことがない。

 それなのにも関わらず、なぜカロスが見覚えがあるのか、自分自身、わかるわけがなかった。


 だが、そんなことを考えている暇は無い。

 少しでも余分なことを考えれば、待つのは“死“だ。


 「流石に時間がかかり過ぎてしまっている。だから私は、本気を出す」


 スゥー……と静かな音を立てて息を吸い、ヴァミアは肺に空気を入れる。


 どこまでも透き通るような青き目が、カロス達を捉えると、風に長い銀髪をなびかせながら剣を構えた。

 だが、その顔はどこか悲しげな表情で――


 「火怒羅(ひどら)


 そして、今までとは比べられないほどの火力の炎が剣を纏い、ヴァミアの周りのは黒き炎で造られた、大蛇が出現した。


 


 


 

 


 

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