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59話 救出

 全く先が見えない闇の中を、しばらく歩いていると奥の方に明かりが見えた。


 「あ!明かりだ!」

 「そのようですわね。やっとこの暗闇から――」

 「静かに!」


 ロスカに静止をかけて、近くの岩に隠れるように指示を出した。

 

 「おいおい!逃げるなよ!」

 「そうだぜぇ。お前達が的になってくれないとゲームが始まらないんだからさぁ」


 この声はファイアーウルフ達のではないよな。

 ていうことは敵の声か……もしかして外の様子を知らないのか?


 「やめてください!」

 「ヒャハハ!お前たちが指示出来る立場だと思ってんのかぁ?ならより一層しつけをしてやらないとなぁ」

 「でも殺しちまったらマッド様に怒られねぇか?」

 「大丈夫だって。ファイアーウルフなんて腐るほどいるんだ。1匹殺したぐらいでバレやしねぇよ」


 ここからでは何もわからず、敵を目視することはできない。

 だけど、アイツらがフェイ達が命をかけて守ってきた者をいたぶって、悪意に塗れた顔を向けていることだけは、鮮明に脳裏に浮かぶ。


 俺はアイツらを絶対に許さない。

 フェイが守ってきたものは、俺が死んでも守りきる。


 俺の頭の中では様々なものが駆け巡り、怒りで震える足を前へ動かした。


 「一体仲間達に何を――リウス様?」

 「ねぇちょっと、どこ行くの?」


 俺が突然隠れるのをやめて、敵のいる場所に向かったことに驚いた表情を見せたあと、すぐさま戻るように促された。

 だが俺は、足を止めることはしない。


 「どこ行くって、助けに行くんだよ」


 


 「おいおい、さっさと立ってくれよ。俺たちも早くゲームを始めたいんだよ」

 「やめて……やめてください……」

 「いいからさっさと――」

 「ねえ、何やってんの?」

 「おい邪魔するな……ってお前誰だ――」


 俺の前に立つ兵士は、最後まで言うことが出来ずに心臓を貫かれて死んでいった。

 もちろん、心臓を貫いたのは誰でもない俺だが。


 「リウス様!」

 「やったぁ! 俺たちを助けにきて下さったんだ!」

 「もう死んじゃうかと思ったよぉ……」


 ファイアーウルフ達は、俺の姿を見た途端に、この状況に絶望していた表情から、一気に明るい表情へと移り変わった。


 「大丈夫ですか?」


 血を流す兵士の隣に座り込んでいるファイアーウルフに、俺は声をかけた。


 「本当に……本当にありがとうございます……!」


 なんだ……これは……?

 俺が声をかけたファイアーウルフの腕には、謎の文字が刻まれたリングがはめられていた。

 他のファイアーウルフ達の腕も見てみると、同じようなリングがはめられていた。


 「恐らく、このリングは魔獣弱体化を目的とされて作られたリングだろうな。しかしこれだけの数を用意するとは……相当な金を使っているようだな」

 

 いつの間にか俺の隣に来ていたグーレは、目の前で座るファイアーウルフからリングを外すと、様々な方向から眺めて言った。


 「そんなに簡単に外れるんだな」

 「そんなわけあるか。私だから外すことが出来たのだ。私だからな」


 そう言って、グーレはリングを木っ端微塵に握り潰した。

 

 「おい! 大丈夫か! しっかりしろ!」

 「残念だが、そいつは死んだよ。心臓を貫いたからな」


 俺の腕は、金属のように硬い鋭利状に変化しており、心臓を貫いた兵士の血が滴れていた。


 「貴様ぁ! 一体どこから入って来やがったぁ!」

 「外の監視は何をしているんだ!」

 「外の監視とかの前に、なんでこの場所が知られているんだ!」

 「応援を呼んできます!」

 「行ってみてもいいが……どうせ無駄だぞ」

 「無駄なわけあるか!」

 「なら実際に外に行って確かめてみるといい。もう誰も、生きている者は居ないだろうから」

 「生きてない……だと……」


 誰も生きていない、この言葉に相当ショックを受けてしまったのか、散々叫んでいたくせにいきなり頭を抱えて黙り込んでしまった。

 まぁ、急に仲間が死んだって聞かされたらそうなるよな。

 ていうか早くこいつらを片付けて救出を――


 「貴様ら動くな! 動いたらこの女を殺すぞ」

 「……」


 そう叫び散らかして、兵士はある人物に剣を喉に当てていた。


 「おい! さっさと武器を置いて跪け!」

 「あーぁ……あいつ終わったな……」

 「そうですわね……なんとも哀れな」

 「あぁ……かわいそう……」


 敵の兵士は人質を取ったことにより、余裕が出来たと思っているのか、口角を上げて何かを企む表情を見せた。

 

 だが俺たちは何もピンチを感じていない。

 何せ兵士が人質に取ったのは、誰しもが恐れる魔王なのだから。



 

 


 

 


 

 

 

 


 

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