45話 氷結の白狼
ファイアーウルフの村の近くでは、カロスとヴァミアの激しい戦いが繰り広げられていた。
「これ、私たち入ったら絶対死ぬよね」
「だよな。自由にしろって言われても、これじゃ出来ないよな」
岩の上でカロスとヴァミアの戦いを眺めて、そう話すのは、遠距離攻撃を得意とするマナとダオクだった。
「ユワーノとフルカはあいつを助けにいっちゃったしさ」
「マガトス強いのは良いんだけど、こわいんだよなぁ。あのまま、岩に埋まってれば良いのに」
マナとダオクは一瞬、マガトス達の方を見るが、すぐに視線をもとに戻した。
その目線の先では、止まることなく激しい戦いが続いていた。
「ヴァミアと言ったな。なかなか強いではないか」
「そう思いなら、さっさと負けてくれないか」
「それは、お断りだな」
ヴァミアは低い姿勢をとると、そのまま地面を右足で蹴り、カロスに急接近した。
「氷桜」
カロスは空中に細かい氷をばら撒き、それがヴァミアを襲った。
ヴァミアの体には、大量の細かい傷ができて血が流れ出した。
「痛いだろう」
「こんな傷は無いのと同じだ」
ヴァミアは、剣を顔の前で構えると、小さな声で何かを呟いた。
すると、鉄の剣を包んでいた黒炎が、さらに激しさを増した。
「これでお前を殺す」
「我を殺せるものなら殺してみるがいい」
カロスは、頭上に十本以上の氷柱を作り、それをヴァミアに向けて放った。
だが、ヴァミアは怯むことなく、剣を構えると、巨大な氷柱を真っ二つに斬っていった。
「早くお前を殺して、後ろ奴らも皆殺しにしたいんだがな」
「そうか。だが私も早く戦いを終わらせたいのは、同感だ」
「それなら、早く我に殺されてくれないか?」
「逆だな。お前が私に殺されるんだ」
「ヴァミア様!」
カロスとヴァミアが睨み合いを続けていると、息を荒くした兵士が走ってきた。
「どうした?」
ヴァミアは、いつ攻撃してくるかわからないカロスに意識を残したまま、兵士に応えた。
「作戦の予定時間に、大きな遅れが出ております!
そのため作戦を変更し、三万人を獣人の国に侵攻させることとなりました!」
「了解した。私達は、氷結の白狼を討伐した後に残りの者を連れて向かえばいいのだな?」
「はい!」
なんだと?それはまずいな。我が足止めをしている間に、ファイアーウルフ達を避難させるはずだが、これでは全く時間がたりぬ。
カロスは、今とるべき最善を頭を最大限に使い考え、答えを導き出そうとした。
どうにかして、敵の侵攻を防がなければならない。ヴァミアの隙を見つけて、兵士達のところへ行き、皆殺しにするか。
いや、それは流石に不可能か。こいつが隙を見せるわけがない。
カロスはこの場でとるべき最善が見つからない――わけではなかった。
これ以外のことを実行したところで、ヴァミアに全て防がれてしまうだろう。
ならば、我はこれを実行するのみ……!
「ワウォォォォォォォォォォォン!!!」
カロスは大きく息を吸い、上を向くと、口を大きく開け遠吠えをした。
「お前何をしているんだ?」
「ちょっと待っていろ。そしたらわかる」
「いや、お前が何かをする前に私が殺す」
「残念だが、もう遅いぞ」
「なんだあれは」
ヴァミアは、カロスに警戒はしながらも、上を見ると、金色に輝く光がこちらに向かって来ていた。
光は、速度を落とすことなく近づいてきて、地面に直撃した。
「く……!」
地面は激しくひび割れ、近くにあった岩や木を吹き飛ばしていった。




