表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/93

42話 覚醒

 「あ……ぁ……」


 俺の目の前で、赤い液体や肉片が飛び散っていく。


 どうしてだろうか。どうして俺は、今目の前で起きてる惨劇を防ぐことが出来なかったのだろうか。


 アイツを生かすことなんか考えずに、さっきの攻撃で仕留めていたら、こんなことにはならなかったのではないか。


 俺は考えれば考えるほど、身体の中が黒く、ドロっとした液体なようなものに侵食されていく感じがした。


 「これで……私はさらに強くなったぞ!!!」


 あいつは……あいつは……


 クローラは両手を高々と空に突き上げ、声を上げた。鎖は喰らうのを止め、主人の指示を待っている生物のように、大人しく待機している。


 鎖からは血がポタポタと垂れ落ち、血が垂れる先には、赤く染まった腕が一本だけ落ちていた。


 血に染まる腕を見た途端、黒く、どろっとした液体に、小さな火が投げ入れられ、そして俺に中で燃え広がっていった。


 「この鎖があれば、お前の腕などに壊されることはもうない!」


 クローラは俺に向かって唾を飛ばしながら興奮気味に喋ってきた。だが俺にとったらあいつが唾を飛ばそうが興奮していようが、俺を見下そうがそんなことどうでもいい。


 だけど……あいつは……お前は……


 「生きていたらいけないんだよ」


 俺は、魔獣の腕から人間の腕に戻した後、右手を前に出し、手のひらを上に向ける。すると、それに反応するかのように風が荒く吹き荒れだした。


 「貴様……何をする気――」


 クローラは俺に向かって目を見開き、一歩近づいた途端、右の肩から先が宙を舞って地面に落ちた。


 「ぎぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


 音を立てながら血が噴き出るのと同時に、クローラは喉が枯れそうなほどの声を上げながら地面を転がり回った。


 俺は前に出した腕を下に下ろすと、転がりまわるクローラにゆっくりと近づいた。


 「き、貴様ぁ!なにをした!」


 クローラは俺を睨みつけながら怒鳴った。だが下から睨みつけられた所で、怖さも何も感じない。


 「おい!私の質問に答えろ!」


 だが俺は、クローラの質問に答えることなく、腕がなくなり血が溢れ出る部分を触った。


 「ぐぎゃあああぁぁぁぁぁ!貴様、なにを――」


 効いたな。なら、苦しめよ。


 クローラは急に怒鳴るのを止めると、胸に手をあて苦しみ出した。


 「どうだ?毒っていうのは苦しいか?さぞ気分はいいだろうな」

 「毒……だと……」


 顔の血管はありえないほど浮き出し、胃に入っていたのであろう物を吐き出した。


 「がはっ……ぁぁ……」

 「苦しそうだな」

 「絶対に……殺してやる……」


 残念だな。殺されるのはお前の方だ。


 


 


 

  

 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ