40話 血と鎖
「クハハハハ!見ろ!鎖が赤く光っていく!」
あいつは完全に頭がおかしくなったようだな。いや、もしかしたらあれがあいつの本性なのかもしれない。
後方にいた兵士たちを皆殺しにし、血を吸った鎖は、灰色から赤に変化して光っていた。
「だがまだ血が足りない……、もっと……もっと血をよこせぇーーー!」
兵士たちの血を吸い尽くした鎖は、新たな血を求めて俺たちのところへ再度向かってきた――わけではなかった。
俺たちを無視して通り過ぎていくと、自ら悪魔に命を差し出して召喚した人物――ナーシャの元へと向かっていった。
そしてナーシャを鎖で拘束すると、クローラは空中に持ち上げた。
「おい、まさかお前仲間の血を吸うつもりか?」
「だったらなんだ」
「だったらなんだって……よくもまあ、死んだ仲間の血なんて吸えるな。結局は仲間も強化するための材料ってことかよ」
「お前は何か勘違いをしているようだ」
クローラは、急に冷静な口調になると、空中に吊り上げられるナーシャを見た。
「私はナーシャを鎖を強化するための材料にするのではない。血を吸うことでナーシャを蘇らすのだ」
「蘇らすだと……」
「そうだ。ナーシャは残念ながら死んでしまった。そしてこのまま放って置いたら死んだままだ。だがな……」
そう言葉を止めた直後、冷静になった顔に再度、不気味な笑顔が戻り声が高ぶっていった。
「だが、私がナーシャの血を得ることにより、私の中でナーシャは蘇る!死した者は、生きるものに血や肉を喰われ、また別の体となり生きる!私の鎖によって死んでいった兵士達も、命を失ったナーシャも、私の中で蘇るのだ!」
そう叫んだ瞬間、何本もの鎖がナーシャの体を貫き、血を吸っていった。
「完全に狂ってるな」
「人間はそのくらいがちょうどいいのです」
鎖は休む暇なくナーシャを貫いていき、もう血がなくなったのかナーシャを拘束していた鎖を解き、地面に落とした。
赤く光っていた鎖は、さらに光りを強めていった。
「これでこの鎖は強化された!もう誰にもこの鎖を破壊することができない!」
さあ、これからどうしようか。また鎖を掴んで電気を流してみるのもいいが、多分その攻撃も通用しないだろうし……
「考え事していると先に殺られてしまいますよ」
どうしようか考えていると、悪魔に注意を促されて鎖が迫って来ていることに気がついた。
「ちょっと試してみましょうかねぇ」
悪魔は何やら考えがあるらしく、鎖をギリギリでかわすと右手を上にあげ鎖に振りおろした。だが……
「やはりダメですか」
悪魔は鎖を切断するどころか、逆に自分の腕を切断されてしまった。
さっき、悪魔は容易く鎖を切断していたが、今度は切断することが出来なかったということは、相当強度が上がっているのだろう。
さらに速度も攻撃のパターンも明らかに違う。これはマズイかもしれないな……。




