12話 音
俺は重い扉を開き、会議を行った建物から外へ出た。
まだ室内では色々大騒ぎしており、耳をすませば何を話しているのか聞こえるレベルだ。
「なんだ。我の氷で一生封じ込めてやろうか」
「フッ、笑える。あなた如きの氷で私がやられるとお思いで?」
あいつらいつまで言い合ってるんだよ。でも俺もそんなことを気にしてる場合じゃないんだけどな。
俺はポケットから石を取り出し、手のひらで転がした。まだ俺はマジックストーンを使いこなせるわけではない。だから2日後までにはどうしても使いこなせるようにならなければいけない。
でも一体どうすればいいんだ。まだ出したい魔獣の力を出せるわけじゃないし、だからと言って何がダメなのかわからないし。
うーーん……
「まあとにかく練習だな」
俺はそう呟き、この村から少し離れた森に向かうことにした。
ここら辺でいいかな。大体村から30分くらい歩いたところで俺は足を止めた。
そこは周りが木しかない深い森。
まだ俺は、このマジックストーンがどのようなものかもわからないし、うまく魔獣の力を制御できるわけでもないから、念のために少し離れた森で俺も特訓をすることにしたのだ。
でもここからどうしようか。どうすれば使いたい魔獣の力を出せるかがわからない。名前を叫ぶ?とにかく考える?本当に何をすればいいのかわからない。
まあ思いつくだけ試してみるか。
じゃあまずは……。
ガサガサ!!!
俺が色々試してみようと思った瞬間、近くの背の高い草が大きく揺れた。
「え?なに……」
俺は逃げたいという気持ちが体中を駆け回っているが、その反面正体を知りたいという欲求も体中を駆け巡り、結局後ろへではなく前へ体が動いてしまっていた。
一歩、また一歩。そうして俺はゆっくり音が鳴った方へ近づいて行った。
ガサガサ……ガサガサ!!!
さらに草は揺れ、何かがどんどん近づいてくる。
俺はさらに足を進め、どんどん近づいてゆく。
ガサガサガサガサガサガサ!!!
草は揺れさらに音は増していき……
「グスン……ミミィを……助けて」
揺れる草から出てきたのは涙を流す一人の少女だった。
「ミミィ……迷子になっちゃったの……」
「迷子……」
俺の目の前に立つ少女は長い髪を伸ばし、人間にはあるはずのない長い尻尾が生えていた。おそらく獣人だろう。
「蝶々を追いかけてたらいつに間にか皆んなから離れちゃって……」
うーん……困ったな。時間がないから早く特訓を始めたいんだけど……流石に見捨てるなんてなぁ……。
よし、はやいところこの子を家に返して特訓を始めるか。
俺は少女の側までいき、しゃがんで声をかけた。
「君の名前はミミィでいいのかな?俺の名前はリウス。よろしくね」
俺は警戒させないようにするために、自己紹介をし、右手を出した。
「よ、よろしく……です」