異世界転移ってこんなもんっすか(1)
私は救いたかっただけだったんっす……あの、虐められているあの子を……
『殺人鬼から産まれた奴がなんでこのクラスにいるんだよ、出てけ!』
『そーだそーだ!この女狐!赤い目は人の返り血を貰ったから赤いんだろ!』
『………………』
理不尽でそれで、でもだからこそ、私はあの子がとても輝かしく見えたっす。だから、私はあの子を救おうと決めたんっすよ。
『止めるっす、その子は自分がその母親から生まれたいから生まれたわけじゃ無いっすから』
『あぁ?なんだてめーこいつの肩を持つってのか?』
『そー言うことじゃ無いっす、第一その子のお母さんとその子は関係ないっすよ、それともいじめるって事はこの子の事が好きってことっすか』
チッと舌打ちをした同じクラスの男子を横目に私はきれいな黒髪をもっている赤目の少女の方を見る。
『大丈夫っすか』
『こめんね……りゅうこ』
『気にするなっす、言いたい奴には言わせておけばいいっすよ』
そう言って私はケタケタと笑った……そして、そこで私は目が覚めた。ぼやけた視界が鮮明になる。相変わらず、中世っぽい見た目の天井で、そこで私は今自分がベットの上で横になっている事に気がついた。
「……あれ、私、気絶してたんっすか」
上半身を上げる。部屋を見渡すと、ベットは窓際にあり部屋の中には木でできた机や棚が置いてあった。そして、窓とは反対のベットの横に魔女っぽいコスプレをした先程、私に下がって来た女性が本を読んで座っていた。
「お、起きた?」
こちらが起きたのに気がついたその女性が、本を閉じて私の方を向いてそう聞いてくる。ん?あれ?なんで言葉理解できるんっすかね……
「え、あ、え、お"ぉ"ぉ"ん?」
え?待ってっす、こ、この人さっきは確実に何言ってるか分からなかった人っすよね?なんでいきなり言葉が理解できるんっすか???
「?????」
「あれー?おかしいなぁ言語同じにして理解できるようにしたんだけどなぁ」
そう言って女性は首を傾げる。いや、傾げたいのは私の方っすよ。
「ちょ、ちょまってっす、言ってる事は理解してるっす、でもなんで貴方の言葉がわかるんっすか?」
「え?急に何言ってるの?」
「いやいや、さっきまで何言ってるか分からなかったすよね?」
すると、その女性はあーと何か納得が行ったかのように声を出して、それからぽんっと掌を叩く。
「それはね、魔法でちょちょいってやったからね」
まるで、料理に胡椒を振り撒くような感覚で言われて、私はまたも言ってる事が理解できず眉間にシワを寄せてしまう。
「魔法????そんなファンタジーみたいな話あるわけ無いっすよ」
「ファ、ファンタジー???なんですかそれ?」
「え?」
「え?」
なんて?ラッスン◯ー◯◯◯っておぃぃぃ!!ネタが古いっすよ!あの人達、確か、ポーズがアウトでアウトポーズになった人達でしたっすよね!ってそれどころじゃ無いっす!え、ファンタジーって言葉分からない人いるんっすか!?
「ちょ、ちょっと待てっす、ここどこっすか?」
「ここどこって聞かれても……魔女が支配している地方としか言えないんだけど」
もう訳分からないっす!魔女?魔女のコスプレをしたコスプレ集団が支配している地域って事っすかね……いや、訳分からないっす!
「??????」
「あれ?これもしかしてこっちの常識が通じないの……?」
「いや、こっちのってなんっすか、こっちのって、海外じゃあるまいし」
そう言うと、海外と言う言葉に反応したのか、女性が海外、出身なの?と言う声を漏らす。ん?なんか心当たりでもあるんっすかね……
「……もしかして貴方、魔族か悪魔なんですか?」
訂正、訳が分からないっす。なんで、海外ってだけで人間やめなくちゃならないんっすかね……
「いや、だからどうしたらそうなるんっすか」
「え?だって海外にいるのって普通、魔族か悪魔か、魔物がいる場所だよね?」
平然そうに言ってるっすけど、私にとっては非常識なんっすけど……
「いや、どう見たって私は人間っすよね?」
「それでも人間の形をした魔族とか悪魔とかもいるから……でも魔力の気配ないのに、魔法無力化する種族は居ないよね……いや、そもそもの話し魔力の気配がないって時点でおかしいんだよね……」
「マナ???何言ってるんっすか?」
すると、今度は、女性の方が困惑したかのようにえ?っと言葉を漏らす。
「もしかして魔力の存在も知らないの?貴方!」
「一応ゲームとかで知ってはいるっす」
「げ、ゲーム?なんの話してるんですか?」
今度は女性の方がガチで困惑した顔になる。
「え?このご時世ゲームを知らない人もいるんっすか、地球上見てもそこまでいないと思うんっすけど……」
「地球……??ここ、惑星ベジータリアンなんだけど」
なんだろう、一瞬Mハゲ王子が頭に浮かんだのは気のせいっすかね……って待ってっす、これ、夢っすかね……え、なんですか、惑星ベジータリアンって???
「………………うん、これは夢っすね、おやすみ!」
そう言って私は布団を被り横になる。どうせ、起きたら痛みと共に地面に叩きつけられてるっすよ…………んなわけあるかっす!!とうまそうと思いつつ私はまた上半身を起こす。
「もう、訳が分からないっす……」
「ちょっと落ち着こうね」
そう言って女性は、ベッドの横にあった机の上に置いてあった透明な液体が入っているコップを私に勧めてくる。
「やめろっす!どうせまた、それ、変な味がする飲み物っすよね!」
「え、変な味って……これ、ただの水よ」
「さっき、飲んだ時変な味したっす!」
そう言って私がコップを押し返すと、女性は首を傾げながら、コップを机の上に置く。それから、んーと少し思案したあと、口を開いた。
「…………やっぱ、話が食い違ってる……」
「いや、気づくの遅いっすよ」
そうツッコミを入れたが、女性は構わず話を続ける。
「もしかして、私が行った召喚術が異世界と繋がったと言う事になるのか……」
その言葉を聞いた私は少し唖然とした後に、女性の事をガン見する。
「え?私の顔に何かついてる?」
「どう見ても、アンタが原因っすよね!それ絶対!」
カチンと頭にきた私の絶叫が、部屋の中に響くのだった。