第二章
第十五話
翌日。
私は、あのとき消さないでおいた”落書き”をふたたび一人眺めていた。
"君、またいじめられてんの?wざまぁないねwwあの頃から生きてる価値なんてないくせに。
父親に捨てられたヤツが、この世に存在する必要ない
風海 爽"
・・・。
やっぱり、なんかこの字”見覚えがある”んだよなぁ。
私は文字の上にそっと指を這わせる。
風海・・爽・・・。
?「舞彩ちゃん・・好きです」 『? あの・・あなたは誰?私のこと・・・しってるの??』
そう思った瞬間、ふと頭をよぎった映像。
幼稚園児くらいの男の子と女の子がどこかの木の下でそんな会話をしていた。
あの男の子は確かに”舞彩ちゃん”といっていた。
ということは、あの女の子は私だということだ。
・・・?
でも、そうなると疑問が出てくる。
・・そう、私があの男の子のことを全く覚えてないということ。
あの頃の私も、”あなたは誰?”といっているのがいい証拠だ。
でも、なんでこのタイミングで・・・?
なにか、風海 爽と関係があるのだろうか?
もしかしたら、あの男の子が”風海 爽”なんだろうか?
でも、思い出せる限りの名前がわからない男の子は、あの男の子しかいなかった。
あの男の子を風海 爽だと仮定して考えてみよう。
なぜ、風海 爽は私の過去をしっていたのか?
_あの頃に私のことを知っていたから。
なぜ、風海 爽は私のことを嫌っているのか?
_決死の思いで告白したのを”誰?”と返されたから。
なぜ、”またいじめられてるのか?”と書いていったか?
_あの頃私がいじめられていたから。
・・・すべてつじつまが合う。
じゃあ、やっぱりあの男の子は風海 爽・・・?
あ「・・い・・・舞彩!?」
!!
『あーごめん。どうしたの?』
ふと我に返った私は、今の状況を確認してみた。
_朝学校に来てすぐ、挨拶もせずに自分の席に座り込み一人考え込んでいた私に、あげはが声をかけてきた。
・・・。
どうしたの?じゃないじゃん!?←
あ「どうしたの?じゃない!!」
同じこと言われたwww
『同じこと思ったww』
あげはが心配するの、当たり前だったw
きっと心配して何回も名前呼んでくれたんだろうな・・・。
その心配してくれたあげはは、少し笑いながら変なことを言い出した私に怪訝な目を向けた。
あ「はぁ・・・大丈夫??」
ため息をつきながらも(やはり)心配してくれたあげは。
『あー。うん、ちょっと考え事してただけ(ニコッ)』
返答を聞いたあげはが眉を寄せた。
??
どうしたんだろう?
あ「それって・・・あの”落書き”のこと?」
!?
なぜわかった!←
あ「いや・・だってあの”落書き”だけ残しとけとか、来て突然もの思いにふけったと思ったら落書きなぞると
か、そうとしか考えられないでしょ」
そして心を読んだ!?
あ「・・・声に出てた」
!!?
『まじかww あ「心配なんだよ。また、誰だかわからないヤツの憎悪を受けて舞彩が傷つかないか」 ・・・。』
あげはに遮られて、私は黙り込む。
・・・でも、ごめんね、あげは。
やっぱり私、このことはあげはに言えない。
『本当に大丈夫!さ、一限目始まるよ?』
まだ心配そうなあげはを半ば強引に追い返して、私はチャイムが鳴るのを待った。
第十六話
二限が終わった後の休み時間。
私は図書館に行った。
私のお目当ての本は、ラブコメディ『声をかけてくれた君。』だ。
最近、この『声をかけてくれた君。』が大流行している。
え?
じゃあ、図書館にあるわけがないって?
・・・まぁ、そりゃそう思うよね。
だって、”大流行している本”が図書館にあったら借りられてるもんね。
でも。
このことは、私と数人の人しか知らないから、秘密だよ?(笑)
・・・そう。
この学校には、”影の図書館”と呼ばれている場所がある。
あ、”影の図書館”って言うのは、今は使われていない旧校舎の、”旧”図書館なんだけど・・・。
そこの図書館は、なぜか最新刊まであるんだ。
しかもね、今使われてるほうの図書館より三倍くらい広くて、中心部分に螺旋階段がついてるの。
これって、この学校の七不思議だよねww
で、”数人しか知らない”っていうのは、旧校舎に今でも出入りしている物好きの人たちのこと。
お互い、名前も学年も知らないけど、時々会話したりするんだよね。
で、私もその物好きの人たちの仲間w
というわけで、『声をかけてくれた君。』を探しに来たのだった。
ラブコメディは、図書館の三階にあるはず・・・。
えーっと、こ、こ、こ、こ・・・あ、あった!
やっぱり、一週間前に発売された最新刊『声をかけてくれた君。』があった。
だけど、『声をかけてくれた君。』は、思ったよりも高い位置にあった。(本棚の)
あー・・。
これは届かないな。
どーしたもんか・・・。
困っていると、時々”影の図書館”で見かける人が後ろから
?「これ?」
といってスッと取ってくれた。
優しい!
『それ!ありがとうございます』
優しく微笑んでくれたその彼は、
?「全然いいよ、またなんかあったらいいな」
と、とても頼りになることを言ってくれた。
うわー・・・。
行動がとてつもなくイケメンである。(容姿もめちゃめちゃイケメンだけどw)
絶対モテるだろうなこの人・・・。
『あの・・・。お名前を聞いてもよろしいでしょうか?』
おそらく同い年の人なのに敬語を使ってしまったw
?「ああ・・いいよ。僕は、風海 爽。一年、Aクラス。よろしく」
風海・・爽・・・?
風海 爽!!!?!
この親切なカレが・・・。
あの”落書き”を書いたひと!?
私の過去を・・・知っているひと・・・?
?「ああ。僕が、風海 爽。昔、君に酷いフラれ方をしたあのオトコノコだよw」
私を嘲笑するような言い方でそう告げるカレ。
だけど、やっぱり私はあの時以前に風海 爽にあった記憶はないのだ。
『五歳の時・・・だよね、初めて会ったの』
風海 爽が・・・告白してくれたのは、私が五歳になったばかりの時だ。
で、私はそれ以前にあった記憶がないのだから、そういうことになるはず・・だけど。
爽「はぁ?何言ってんの君。僕は、三歳の頃に君に初めてであった。そのとき、隣に住んでたじゃんか。僕は、
・・・僕は三歳の頃、こっちに引っ越してきた。
そこで、隣の家のひとに挨拶しに行ったんだ。
そしたらそこに君はいた。
そこからずっと仲良くしてて、・・・毎日お互いに何よりも大切だって言い合ってた。
一緒に字の勉強したり、絵を描いたり、鬼ごっこしたり・・・。
だけど君が四歳になって数ヶ月が過ぎた時、ふいに誰とも話さなくなって・・・。
あんなに大切だっていいあってた僕とも。
それでも、いつか、話してくれるかもしれない。
そう思って数ヶ月は我慢したんだ。
でも、君はいっこうに話しかけてこなかった。
だから、君が五歳になった数日後の誕生日会のあと、裏庭で君に告ったんだ。
そしたら、君は「あなたはだれ?」っていってきた。
僕は、あんなに酷いフラれ方されるなんて思わなかったよ」
・・・!!?
三歳の時に出会った?
その言葉が本当かどうか知りたくて、思い返してみる。
だけど、四歳になってすぐの頃までしか思い出せない。
・・・・!!!
そう。
私は、これまでも何回か思い出そうとしたことがある。
でも、そのたびにモヤがかかったようになって頭痛がし始め、私はなにも考えられなくなるのだ。
信じてもらえるかなんてわかんないけど、説明してみよう。
・・・説明中・・・
爽「はっ?わけわかんない。え、なに、じゃあ君・・・いや、舞彩は四歳あたりから前のこと覚えてないって事?急に話さなくなったのもそのせい!?」
・・・そう。
たしかに、私はだれともはなさなかった。
誰が誰だかわかんないのが怖くて。
そのことを攻められるのが怖くて。
_嫌われてしまうのが、怖くて。
だからこそ、風海 爽に告白されたのは、本当に驚いた・・・ってことを今思いだした。
私は風海 爽の言葉にこくんと頷く。
カレは絶句したようだった。
しばらく考え込んだあと、スゴく優しい顔で笑った。
思わず見とれてしまうようなかっこよさだった。
爽「そっか・・。ごめんね、あんな落書きをして君を傷つけた。思い出せるように、僕、協力するね・・・」
申し訳なさそうに謝られて、私は慌てて許してることを告げた。
だって、私が思い出せないのが悪いのだから、と。
そしたら、
爽「爽って、呼んでよ。それに、舞彩は悪くないよ。きっと、記憶を失ってしまうくらいにツラいことがあったんだろうし。気にしないで。あと、よかったら僕と仲良くしてください」
・・・!!
『こちらこそ!爽、よろしくね!』
_こうして、風海 爽とのことはなぜか和解して解決したのだった。
第十七話
教室に戻ると、あげはにソッコーで飛びつかれた。
あ、ちなみにここだけの話、潰したあとはSクラスからAクラスに移ってったよwww←
三限ギリギリに教室に戻ったため心配していたみたいだ。
私は『大丈夫だよw』といってあげはをなだめる。
そして、三限が始まる。
私の後ろの席があげはだから、さっきの出来事を紙に書いてまわした。
”あのね、さっき図書館に行ったら風海 爽にあって、なんか和解したw
爽とは仲良くなれたからもう心配しなくていいよ”
あ「えっ!!?」
思わず叫んでしまったようだ。
先「どうした、霧島。この問題がわからなくなったのか?」
www
先生ー何言ってるかわかりませーんw←
『気にしないでいいよーTeacher!』
あ「発音んんんnが無駄にいい!!↑←」
あげはが壊れた!!w
『・・・気にしなくていいよ、先生w』
あ「・・・・(じとっ)」
私があからさまに笑ったのが気にくわなかったのか、ジト目で睨んできた。
それを私はスルーした☆←
先生は呆れたように苦笑いをして授業を再開した。
・・・三限目・・・
しゅーりょー!
先生「これで三限目を終わります。あr『あざっした!!』遮るな、綾瀬!」
みんなが少し笑う。
蒼「最後までしまらなかったね、センセイ☆←」
少しも哀れんでない口調で蒼依が先生をねぎらう←
そのまま、四限目に入った。
・・・四限目・・・
先「えー、これで四限目をおわr『あざっした!!お昼ご飯食べよ-!!』遮るな、綾瀬!!!」
今度は、みんなが爆笑した。
『ごめんね、先生w』
私は、食堂に向かって走り出した(笑)