Chapter1-98
バーレーン砦が制圧され、魔物たちは敗走していく。
「追いますか?」
「いや、深追いは危険だ。とりあえず、近辺の国境を警備している兵をこちらへ回してくれ」
兵士にそういうレクシオン王子に、兵士はいった。
「了解しました。二日あれば交代の人員が着くでしょう」
「ご苦労様だった。さて、私も砦に赴こう」
そうしてレクシオン王子がバーレーン砦に着いた時はもう日も暮れ始めていた。
「諸君らの働き、見事であった。これでサタゴニア王国との戦いはこちらが優位を取れるようになった」
「私は城へ戻るが、諸君らは交代の陣営が来るまで交代で待機していて欲しい」
レクシオン王子はそういうと、ドラゴンプリンセスの姿を取っているレーナ姫にこういう。
「さて、私たちは城へ戻るぞ」
「兵士の皆さんに申し訳ない、と思うけどあなたがそういうならそうするわ」
レーナ姫がそういうと、レクシオン王子はこういう。
「私たちは小規模な転移魔法で城へ戻る。君の仲間もそれでいいか?」
「どうですか、皆さん?」
ファーラの問いに、残り二人は頷いた。
「大丈夫みたいです」
「なら、手をつないでくれ」
レクシオン王子に促され、レーナ姫はレクシオン王子の手を繋ぐ。
そして、レーナ姫の仲間達はレーナ姫の手を繋ぐ。
「テレポーション!」
レクシオン王子がそういうと、そこはジェノス城の城前広場だった。
「中庭には再度転移除けの結界を張ったからな。ここが転移先になる」
「問題ないわ、レクシオン王子。ここなら城はすぐ目の前だから」
レーナ姫がそういって城に入ると、レクシオン王子はこういった。
「今日の働き、大儀であった」
「私は私にできることをしただけよ。これまでも、これからも」
そんなレーナ姫に、レクシオン王子はこう返す。
「それなら、今夜は私と二人で眠らないか?」
レオンハルトは結界を張った上でレーナ姫としての口調は崩さずにこういった。
「正気なのか?」
「変身を解かない限りは女性ではあるわけだしな。何、別にやましいことはない」
そんなレクシオン王子に、レオンハルトはこういった。
「確かに、隣で寝るだけなら『同性でもありえる』ことなのか」
「まあ、そうなるな」
レオンハルトは同性愛に理解がないわけでないが、ファンタジー世界において同性愛者に対する風当たりは強い。
そこを理解しているからこそレオンハルトはそういったのだ。
「ともかく、部屋に向かおう。ヴェラに伝えなければならないから、結界を解いてくれないか?」
「分かったわ、レクシオン王子」
レオンハルトはレーナ姫としてそう答え、結界を解くのであった。
第一部完




