Chapter1-97
ドラゴンクリムゾンも数体居るが、周囲を気にしなくていいレーナ姫達にとって敵ではなかった。
「させない!」
「ナイスガード、レーナ姫!」
レーナ姫が尻尾で冷気を薙ぎ払い、エリファーがドラゴンクリムゾンを切り裂く。
戦意を無くしたドラゴンクリムゾンは砦へと後退する。
「どうしますか?」
「ファーラはドラゴンクリムゾンの治癒力でも、あそこまで傷つけられたら治療に一日は掛かると思う?」
そんなレーナ姫に、ファーラはこう返す。
「深手を負っていますから、間違いなく治療に数日は必要でしょう」
「なら周りの敵を優先する意味でも放っておくわ」
今は戦争なので無縁な殺生をしないということを考える余裕がないように思えるが、
殺さずに済むならそうしたいというのが四人の意志であった。
いくら深手を負っていても流れ弾に当たるような動きをする敵は居ないし、
敗走する敵を狙うような暇も味方にはない。
ドラゴンクリムゾンはデカい分当たりやすいが、その分タフなので当たっても問題ないのだ。
兵士たちはそこまで分からないが、周りの敵を優先した方がいいという思いに同調したため特に咎めなかった。
「さて、そろそろ砦ね」
「リリィのいう通りだけど、ダイヤモンドゴーレムが居るとしたら砦の中には居ないはずよ」
ダイヤモンドゴーレムは巨体なので、砦の中で戦うと砦を破壊してしまう恐れがある。
サタゴニア王国にとってもバーレーン砦は重要拠点なので、破壊してしまうような愚策は取らないはず。
そういうわけで砦の中にはいないと四人は踏んだが、ダイヤモンドゴーレムは影も形も見えない。
「まさか砦の中……」
「レーナ姫、上!」
エリファーがそういうと、砦の上にダイヤモンドゴーレムが居た。
「空から奇襲しようと思ったなら、ダイヤモンドゴーレムの身体でそれをできると思っていたんでしょうか」
「それはないはずよ、ファーラ。恐らく、その巨体を生かしてボディプレスかますつもりじゃないかな」
そんなレーナ姫に、リリィはいった。
「予想通りね。みんな、よけて!」
リリィがそういうと同時に、四人はダイヤモンドゴーレムのボディプレスを回避する。
「集団が相手なら一人は潰せると思ったようだけど、生憎こっちは四人だからね」
「レーナ姫のいう通りです。ダイヤモンドゴーレム、あなたはもう負けています」
そんなファーラに、レーナ姫はこういう。
「そういやドラゴンクリムゾンはまだこの辺でうごめいて居るわね。なら!」
そういうや否や、レーナ姫はサキュバスプリンセスに変身する。
「リリィ!」
「分かったわ!エリファーとファーラは砦に!」
レーナ姫は二人が砦に向かうのを見届けた上でリリィから魔導書を受け取ると、
精気をドラゴンクリムゾンから死なない程度に吸い取っていく。
「これで一週間は治療が必要ってところかしら。まあ、行くわよ!」
レーナ姫は精気を魔力に変換し、飛行力を増幅させる。
「エクスカリバーの切れ味をその身に受けなさい!」
ダイヤモンドゴーレムの直上で飛行を解除すると、レーナ姫は重力に従い下に落ちる。
それと同時に剣が振り下ろされると、ダイヤモンドゴーレムは真っ二つになるのだった。
レーナ姫は地面に衝突する寸前で再び飛行を掛けたため、落下によるダメージは受けなかった。




