Chapter1-94
「確かに、それは大変だよな」
そんなレクシオン王子に、レーナ姫はいった。
「同情するならキスは辞めてくれないかな……?」
「それとこれとは別問題だ。割り切れよ」
レクシオン王子の言葉に、レーナ姫はこう切り返す。
「本当の私を知っていてもなの!?」
「男は前提よりも目の前の女体を求める物なんだ。それに君の素直さは嫌いじゃない」
レクシオン王子はレーナ姫を抱き寄せる。
流石にそうなればレオンハルトも抵抗するわけにはいかず、そのままキスされる。
「っ……」
「どうだった、レーナ姫?」
そう問いかけるレクシオン王子に、レーナ姫はいった。
「私、下手じゃなかった……?」
「心配するのそこなんだな」
ずれているといいたげなレクシオン王子に、レーナ姫はいった。
「まあ、いざっていう時の覚悟はしていたし。むしろあなたがこれで良かったのか気になるのよ」
「やるとしたら徹底的にやらないと気が済まないって性質なのか」
その言葉に、レーナ姫はこう返す。
「そうかもしれないわ」
「ともかく、そろそろ昼食の時間だぞ」
そして時は経ち、バーレーンの砦攻略戦の前日。
出立の前ということで、レーナ姫はレクシオン王子の演説に連れられていた。
「時は来た。今こそ我々はサタゴニア王国との膠着状態に楔を入れ、歴史に名を刻む者にならん!」
「自然を破壊してきた我らに咎はあれど、サタゴニア王国の侵攻を許すわけにはいかない」
レーナ姫はそういったのち、こう続ける。
「さればこそ我々は立ち上がり、サタゴニア王国との戦いに終止符を討たねばならぬ!」
「諸君らは愛する者を戦地に送り込むことに不安もあろう。現に、生きて返せる保証はない」
レクシオン王子はそう前置きしつつ、演説を聞く民衆にこういう。
「兵士の諸君も心して聞け。我々は最善を尽くす、しかしこれは命を懸けた戦いである」
「臆する者が居れば引き返してもも咎は与えない。それもまた選択だ」
レーナ姫はこういうが、引き返そうとする兵士は居なかった。
皆、命を懸ける覚悟はできているようである。
それを見たレクシオン王子はこういう。
「ともあれ、今日一日は愛する者と過ごすがいい。これが最後になるやもしれないからな」
「愛する者が居ないのであっても、心残りはないようにせよ」
レーナ姫はそういい、レクシオン王子に連れられて城へと戻る。
「城に結界を張っていいぞ。城の外に出してはやれんが」
「分かった」
レーナ姫はそういい、結界を張ってから変身を解いてレオンハルトに戻るのだった。




