Chapter1-92
ミートパイに舌鼓を打つレーナ姫達を見て、レクシオン王子はこういった。
「喜んでもらえれば、ここを選んだ甲斐はあるよ」
「どういたしまして」
レーナ姫はそういい、仲間と共にレクシオン王子へ連れられて城へと向かうのだった。
「なあ、レーナ姫。今日一日僕と過ごして見てどうだった?」
「悪くはないと思ったわ」
キスをしようとするレクシオン王子を見て、レーナ姫は制止する。
「まだそういうのは早いと思うわ。もうちょっと深くあなたのことを知らないと……」
「分かったよ、レーナ姫」
そういってレクシオン王子は素直に引き下がった。
そして部屋に戻ると、レオンハルトは変身を解く。
「なあ、エリファー。キス、してもいいか?」
「流石に急ね。事情を説明してくれないかしら」
エリファーはレオンハルトに好意があるものの、流石にいきなりキスを強請られて戸惑ってしまった。
「君たちは先に部屋に戻ってたから知らないだろうけど、レクシオン王子がキスしようとしてな」
「それは嫌じゃないの?」
エリファーの問いに、レオンハルトはいった。
「レーナ姫を演じるならキスの一回や二回はどうってことない。場所によっては挨拶代わりなんてこともある」
「つまり、ファーストキスの相手が男なのは嫌ってことね」
そんなエリファーに、レオンハルトは変身を解いて頷くしかなかった。
「でも、私も好きよ」
「ありがとう、エリファー」
そういって二人は身体を寄せ合い、キスをする。
「強請った割には軽いキスね」
「エリファーも俺も騎士なんだ、あまりディープなキスをするようなタイプじゃないだろ?」
レオンハルトは生前、キスの経験は無かった。
幼なじみは居たといっても流石に14歳だったこともありキスしたことが無かったのだ。
「それもそうね。茶化しただけよ」
「とりあえず変身し直して、夕食を待とう」
そういってレオンハルトは再びドラゴンプリンセスに変身し、レーナ姫として夕食を待つため結界を解いた。
それを見たリリィはこういった。
「私ならキスもっと上手いんだけどな」
「一応仇のはずなのに、気になるんですか?」
そんなファーラに、リリィはこう答える。
「恨んでないってのはいったけど、なんかエリファーが抜け駆けした感じしない?」
「私は二人の仲を応援しますよ。メイドなので、そういうのは祝福すべきことです」
達観したファーラに、リリィはこういった。
「なるほどね。私は正直、レオンハルトはよく分からないかな」
「そうでしたか」
ファーラはそういいながら頷くのであった。




