Chapter1-9
というわけで、レオンハルトとファーラは二人でお風呂に入っていた。
無論、結界を張っているので裸を見られる心配はない。
が、まずは身体を洗っていた。
「石鹸が置いてあるわけだし、洗うぞ」
「はい」
最も、シャワーなんて便利なものはあまりない。
科学の代わりに魔法を組み込めば作れるといえば作れるのだが、田舎までは普及していない。
そのため、湯船から直接湯を組んでそれで身体を流すことになる。
何せ、温泉ならいくらでも湧くからである。
というわけで、二人は温泉から組んだ湯で石鹸を泡立てることになる。
「さて、入念に洗いましょう」
「いいよ。自分で洗う」
そんなレオンハルトをファーラはこう制止する。
「だめですよ。あなたは姫でもあるんだから入念に洗わないといけません」
「分かったよ」
観念したように、レオンハルトはファーラのなすがままに身体を洗われていく。
ついでというのも何だが、ファーラも自分の身体を洗う。
そして、二人は湯船に浸かる。
「流石にいい湯だな。伊達に温泉で売ってる訳じゃない、か」
「湯船なんて身体を休めれればどこも同じではありませんか?」
「そうでもないぞ。湯加減とか、湯の感じとかはやっぱ大事だ」
レオンハルトは元が日本人だからか、温泉には少しだけ詳しいのだ。
「へえ、あなたがそんなことをいうなんてな」
「むしろ俺だからこそ、かもしれないな。騎士たるものコンディションを整えるのも大事だし」
「何より、汗をかく仕事だってのもあるのでは?」
そんなファーラの問いにレオンハルトはこう答える。
「確かに騎士は身体を動かす分汗もかく。だから仕事終わりはサッパリしたい、ってのもあるかもな」
「まあ、数少ない娯楽ですもんね」
レオンハルトの居る世界にデジタルゲームはない。とはいえ、彼はそこまで退屈していなかった。
彼はそこまでのゲーマーではなかったし、何よりも旅をしたいと思ったら実際にそういう仕事を受ければ良かったからだ。
あるいは彼自身が実際に模擬戦闘で戦ったり、は身体を動かしてアナログでパーティーゲームをやったりもしている。
なのでゲームが無くて困るということは、少なくとも今の彼には無かったのである。
「だな。身体を動かしたくないって時は本もあるし」
何より、レオンハルトの居る世界でも本はある。
物語の文化はかなり古く、日本でも竹取物語という非常に古い物語が存在するくらいだ。
なのでレオンハルトの世界にも当然ながら本はあり、ゆっくりしたいとき彼はそれを読んでいるのだ。




