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Chapter1-84

「まあ、自分の使命を分かっているなら別にいいさ」


「ありがとう、レクシオン王子」


 そんなレーナ姫に、レクシオン王子はいった。


「ともあれ、サタゴニア王国との戦いは一週間後になる。今が交戦中なのもあるが、大規模な転移魔法を使うからな」


「転移魔法を!?」


 驚くレーナ姫に、レクシオン王子はいった。


「転移魔法のリソースを消費してでも陥落させるべき場所だからだ。現に、あなた達は駅馬車で来ただろう?」


「ええ。転移魔法は確かに一瞬で遠くに行けるけど、その分リソースを消費するのよね」


 ゲームだと転移魔法は手軽に使えるものの、実際問題としてこの世界では転移にかなりの手間がかかる。


 ゲームで手軽に使えるのは簡単にいえばプレイヤーのための作りであるのもあるが、

必要なリソースが少ない代わりとして使える者が限られているというのもある。


 現に、その手の転移魔法は主人公にしか使えないのだ。


 技を覚えさせて転移するゲームもあっただろと思われるかもしれないが、

そのゲームだと飛んでいるのであって転移ではないのだ。


 ともかくこの世界で転移魔法は容易に使えないからこそ、四人は駅馬車でラグラント王国に向かっていったのだ。


「その通りだ。だがその近くには魔法石が眠っている洞窟があるから、攻略できれば膠着状態をひっくり返せる」


「百年間の膠着状態だしね……でも、それなら何で今まで攻め込まなかったの?」


 レーナ姫の問いに、レクシオン王子はこう答える。


「そこは魔族の建てた砦……バーレーンの砦だからだ」


「ダイヤモンドゴーレムが守護する、難攻不落の砦ね」


 ダイヤモンドゴーレム。それはダイヤモンドで出来たゴーレムで、無論作る時に耐火魔法も練られている。


 そのためダイヤモンドの硬さを持ちつつ、弱点である炎は克服しているのだ。


 そういうわけで、並みのドラゴンであれば返り討ちになるといわれる程の強さを持っているのだ。


「知っての通り王家の聖剣のような聖剣は珍しい。そういう剣の使い手は自国を守るので精一杯だった」


「けど、最近はサタゴニア王国に動きがあったと?」


 レーナ姫の問いかけに、レクシオン王子は頷いた。


「ああ、彼らの侵攻が一点特化型になってきたんだ。恐らく、彼らも百年の膠着でしびれをきらしたんだろう」


「逆にいえば百年ずっとバラバラだったってこと?」


 レーナ姫がそう問い詰めるとレクシオン王子はこういった。


「あくまで浸透作戦を行うつもりだったようだがな。ともかくそれはピンチでもあるが、付け入るチャンスでもあるわけさ」

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