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Chapter1-83

 そんなこんなで話をしていると、四人は再び駅馬車を走らせジェノス城へとたどり着いた。


 ジェノス城は城塞となっており、そこに都市が作られている。


「ようこそおいでくださいました、レーナ・クロニア・シューヴェスト」


「あなたは?」


 レーナ姫は門の守衛にそう問いかける。


「私はただのしがない守衛でございます。案内は別の者が行うので」


「別の者?」


 レーナ姫が首をかしげると、メイドがやってくる。


「私はヴェラ。タイガー・ジェド・ラグラント王の命であなた達を迎えに来ました」


「タイガー殿下直々の命なの?」


 そう問いただすレーナ姫に、ヴェラはこう返す。


「会いたがっていたのは確かにレクシオン・タイガー・ラグラント王子ですが……」


「サタゴニア王国との対抗という言葉に噓偽りはない、と?」


 レーナ姫の問いに、ヴェラはこう答える。


「あなたの心次第……といいたいところですが遠路はるばるここまで来られた方の思いは無下にしません」


「分かったわ、案内して」


 レーナ姫はそういい、駅馬車に乗ったまま城の中心部へと向かう。


「駅馬車は私が留めておきますので、あなた方はどうか城へお上がりください」


「助かるわ」


 レーナ姫はそういって仲間と共に駅馬車を降り、城の門をくぐる。


「ようこそ、レーナ姫」


「あなたはレクシオン王子ね。タイガー王は?」


 レーナ姫の問いに、レクシオン王子はこう答えた。


「王は政務にお忙しい。代わりとして私が応対するように、と伺っている」


「まあ今はサタゴニア王国との交戦中だし、忙しいのは分かるわ」


 レーナ姫はそう前置きした上でいった。


「でも、あなたが王に頼み込んだ可能性はないといえないの?」


「……正直私情が無いといえば嘘になります」


 正直に答えたレクシオン王子に、レーナ姫はいった。


「正直が美徳、とはいえないけどここで嘘を吐いて信頼を無くすよりは真実を明かすってことね」


「面目ありません。ですがレーナ姫、あなたは美しい」


 レクシオン王子の言葉に、レーナ姫はこう返す。


「女を口説くにしては下手だけど、褒め言葉は素直に受け取っておくわ」


「ありがとうございます」


 嬉しそうなレクシオン王子に、レーナ姫を演じるレオンハルトは内心複雑だ。


「ともかく、私はサタゴニア王国の件でここに来たのよ」


「何をいいますか、姫。確かにあなたは王家の聖剣を継ぐ者ですが、同時に婚約者でもあるのですよ」


 そんなレクシオン王子に、レーナ姫はいった。


「そ、そうだったわね……」


 実のところレオンハルトが内心複雑だったのはこれもあるのだ。


 これは所謂政略結婚ということになるが、レオンハルトはあくまで代役でしかないのだ。

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