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Chapter1-77

 ガラの悪い男が逃げていったのを見たレーナ姫はこういう。


「それにしても、こんなところにあんな暇人が居るなんてね」


 サバーン王国は狩猟民族の国なので、ガラの悪い男に会うこと自体が珍しい。


 もっとも不埒な目的を持って旅している輩が居ないわけではないため、

さっきのようなことは起こり得ないわけではない。


「まあ会ってしまったものはしょうがないし、声を掛けられただけだし見逃してあげるわ」


 そんなレーナ姫の目の前に、エリファーが現れる。


「どうしたの、そんなところでぶらぶらして」


「本か服が無いかな、と思ったのよ。この姿でも羽と角、そして尻尾は格納できるし、着替えもできる」


 そんなレーナ姫に、エリファーはいった。


「実際今やってるもんね」


「まあ、目立たないわけではないですしね」


 実際、この世界では亜人も居るが珍しいといえば珍しい。


 ましてやレーナ姫は純粋な人間であるはずなので尚更だ。


「あ、研ぎ終わったみたいだし取りに行くわ」


「いってらっしゃい」


 そうしてエリファーを見送ったレーナ姫だったが、彼女……いやレオンハルトは気づく。


「そういや、服選びの基準がよく分からない……見立ててもらえばいいか」


 レオンハルトはうっかりし過ぎてたためか女性口調を崩しそうになるがどうにか修正する。


 今の彼は完全に女性化しているといっても、変身魔法の使用が疑われる可能性はできるだけ排除するべきなのだ。


 それはともかく、結局彼は食事が来る頃だという連絡があったため服を買わずに宿へと戻ってきた。


「フィッシュアンドチップスとバジルスープ、だそうです」


「さっき来たばっかりよね?」


 そんなレーナ姫に、ファーラは答える。


「はい。おおよそ三分ぐらいしか経っていないでしょう」


「だから待つのはそこまで辛くなかったわ」


 そんなリリィに、レーナ姫はいった。


「ごめんなさい。それじゃあ……」


 そうして、四人はいった。


「いただきます」


 夕食を食べ終えた四人は風呂に入ると、寝る準備をする。


「レーナ姫、結局何も買わなかったの?」


「リリィのいう通りだね。買いたいと思う本は無かったし、服はどれも同じに見えるのよね」


 そんなレーナ姫に、ファーラはいった。


「そもそもあなたはオフの時いっつも男姿なんだから買わなくてもいいんじゃないですか?」


「確かに、そうかもしれないけど。でも何があるか分からないよね?」


 そう指摘するレーナ姫に、ファーラは返す。


「そうでしたか。そういう時ようの軽装もちゃんと用意しているので、心配はしなくてもいいですよ」

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