Chapter1-7
「とはいえ、魔物はあまり居ないわね」
「この辺はサタゴニアからはまだ遠いですからね」
魔族はサタゴニアを中心に住んでいるが、動物同様各地に生息している。
シューヴェスト王国は中堅どころなので、辺境にあるわけではない。
辺境に住む魔物も居たりするため、ファーラがいうようにサタゴニアから遠くなれば魔物が減るとはいい切れない。
しかし、レオンハルトもといレーナ姫が旅するルートは整備されていることもあり魔族が少ないのだ。
「確か次はグーリスの村だっけ?」
「ええ。そこは丁度温泉で有名な村ですからね」
「温泉……」
姫の代役である今、温泉に入ることは難しいと『レーナ姫』は考えた。
「心配いりません。宿の個室なら『見られる』心配はありませんから」
「なら問題なさそうね」
基本的に宿は宿場町で取るのだが、グーリスの村のように温泉が有名な村であれば宿もある。
レーナ姫が通るルートは最短ルートになるよう調整されているので、宿場町ではなくそのような村に泊まることもある。
ちなみに、そういう村の収入源は温泉目当てで来る観光客や、温泉で育てた作物の出荷だったりする。
レーナ姫の居る世界は物流が整っているため、ある程度であれば観光業も栄えているのだ。
「さて、そろそろ着きますよ」
そしてグーリスの村に着いた時、村民の一人がこういう。
「良く来ましたね、レーナ姫」
「はい。今はラグラント王国への旅の途中です」
「ラグラント王国となると、これまた遠い旅だね。姫様が泊まったと宣伝していいか?」
そんな村民に、ファーラはこういう。
「いいですよ。その代わりタダで泊めていただけませんか?」
「シビアなメイド様ですこと」
「あ、私の分は出しますよ。私のことは宣伝にできないでしょうから」
結界を張った個室で、レーナ姫を演じていたレオンハルトはファーラにこう問いかける。
「さっきの話聞いていたんだが、予算無いのか?」
「いえ、余裕はあります。保護魔法を掛けた袋一つに資金を入れてますので」
「荷物を軽くしたかったから、袋一つにしたんだな。ラグラント王国は割かし遠いぞ」
そんなレオンハルトにファーラはこういう。
「このご時世だから魔物狩りや守衛の仕事はいくらでもありますしね」
「とはいえ、あてにはしてないんだろ?」
「だからこそお金を浮かせられる分は浮かしているわけです」
そんなファーラにレオンハルトは感心したようだ。
「流石にメイドだけはあるみたいだな」
「お褒めの言葉を頂き、光栄です」




