Chapter1-65
「サキュバスも大変なのね」
「エリファーがそういうのも分かるわ。その代わり、人間よりも頑丈だけど」
そんなリリィに、ファーラはいった。
「話が盛り上がっているところ悪いですが、そろそろ宿に着きますよ」
「そうね。まずは馬小屋に駅馬車を留めて宿に行くわ」
そして四人は宿に入る。
「お泊まりですか?」
「はい。サバーン王国へ渡る前に一晩過ごそうかと」
そんなレーナ姫に、受付の人はいった。
「なるほど。魔族を連れての旅というのも、最近は珍しくないですし」
「観光目的じゃないけどね。私達はラグラント王国でやることがあるから」
レーナ姫の言葉に、受付の人は首を傾げた。
「となると、その魔族は用心棒か何かですか?」
「サタゴニア王国から投降して来たから、仲間として一緒になっているだけよ」
そういうレーナ姫に受付の人は首を下げた。
「それは失礼しました。気を悪くなされましたか?」
「まあ、魔族とみるとどうしても警戒しちゃうよね。戦争中なんだし仕方ないわ」
リリィの言葉に、受付の人はいった。
「かもしれませんね。とりあえず、部屋は?」
「上流コースでいいわ」
レーナ姫の言葉に、受付の人はこう返す。
「上流コースも特上コースよりは劣りますが、それでも高いですよ……?」
「私はシューヴェスト王国の姫だからね」
さらっとそういったレーナ姫に、受付の人は驚く。
「シューヴェスト王国の姫君ですか……確かに我々も商売でやってますしね」
「そういうことよ。無理して特上コースに泊まる気はないの」
そんなレーナ姫に、受付の人はいった。
「それなら、上流コースに案内します。あくまで客としてここを利用するなら、我々も相応の扱いをするのが礼儀ですから」
そういって、受付の人は四人を案内する。
中世に近い世界のこの世界の宿は充実しているとはいい難いが、それでもそれなりの設備が備わっている。
それを見てリリィはいった。
「いい部屋ね。お姉さまはあまりお金を持ってなかったから、始めてかも」
「仮にも一部隊の長だったのに、どうしてですか?」
そんなファーラに、リリィはこう答える。
「仮にも過ぎるのが一番の要因じゃないかな」
ともかく、四人は夕食を取った。
この日の夕食はバジルソースのピザであり、その味は絶妙であった。
「美味しいわね」
「リリィのいう通りだけど、サキュバスに苦手な物って無いの?」
そんなエリファーの問いにリリィは返す。
「吸血鬼がネギやニンニクが苦手なケースが多いのは知られてる通りだけど、サキュバスにそういった物は無いわね」




