Chapter1-64
四人が話をしていると、クロオーネブリッジが見えてくる。
橋の前には門があり、そこが検問所になっているようだ。
「町があるわね」
「リリィはそういうけど、国境付近だしこの辺で他に町を作れる場所はサバーン王国側にしかないわ」
そんなレーナ姫にエリファーはいった。
「なるほどね。物資も集まりそうな場所だし」
「向こうで取れた水牛の肉が特産品です」
そんなファーラにエリファーは問いただす。
「サバーン王国は狩猟民族だから貨幣経済があまり発達してないんじゃ?」
「水牛の肉が多めに取れた時は毛皮と交換することも結構あります。で、毛皮と交換した水牛の肉を売ってるんです」
そう答えるファーラにエリファーはこう返す。
「つまり、物々交換と売買を併用しているってことね」
「そうなりますね。とはいえ、新鮮な肉は随時冷凍保存しているから一年中売ってはいます」
そんなファーラに、リリィはいった。
「商魂たくましいというか……そうなると新鮮な肉は貴重?」
「丸々冷凍するのが主流だから、既にバラされている奴は結構流通しているわ」
そう答えるレーナ姫にリリィは驚いた。
「えっ、一頭丸々持ち込むの?」
「勿論、その分値は張る……というのが適切かは分からないけど相応の物品は求められるわ」
リリィの言葉からそれが疑問なのだと感じたレーナ姫はそういった。
「どうやって運ぶのかしら……というかそんな物が橋を渡って来るの?」
「運び方は人力や魔法が主だけど、流石に橋は渡らないわ。橋を渡るのは解体された肉ね」
リリィの更なる疑問にもレーナ姫が答える。するとエリファーはこういう。
「でも駅馬車が渡れるんだから大丈夫なんじゃないの?」
「橋を渡るよりサバーン王国側で交換した方が効率的だということくらいは彼らも分かっているからそうしています」
そういい切るファーラに、エリファーはこう返す。
「聞いてみただけよ。それとこれとじゃ都合が違うっていうのは分かっているから」
それに、とエリファーは続ける。
「駅馬車は馬が走るけど、水牛の肉は走らないから面倒だってことを思い返したの」
「まあ、聞いた後に気づくこともあるわよ」
レーナ姫の励ましに、エリファーはいう。
「ともかく、宿に行くわよ。……少し恥ずかしいからね」
「私も宿に行くのは賛成です。山道で疲れているでしょうからね」
そんなファーラに、リリィはいった。
「私もね。サキュバスも昼に活動したら夜は寝なきゃいけないから」
「サキュバスは夜行性なの?」
そんなレーナ姫に、リリィは首を横に振る。
「昼行性だけど生き残るために夜動くことが多いだけよ。夢魔といわれるのも催眠や魅了でそう思わせているだけよ」




