Chapter1-60
ファーレセルの山小屋に着いた四人はこういう。
「フラグスの山小屋と違って、平地に建っているのね」
「エリファーが今居る所から見ればそう見えるのよ」
レーナ姫の言葉に、エリファーはこういう。
「確かに、山の中に入ってる気もするけど、錯覚じゃない?」
「いいえ、こういうのは錯覚じゃないわ」
そういうリリィに、レーナ姫はいった。
「まあ、入れば分かるわ」
「なるほど、それじゃあ入ろう」
エリファーはそういって山小屋の中に入る。
「下に降りていく構造ってこと!?」
「大丈夫です。山肌に沿って作られているから落ちる心配はありません」
そんなファーラに、エリファーはいった。
「そりゃ、人が泊まる所だしね」
「こういった極限の所に建物を建てることは魔族でもあるわ。斜面じゃ眠りづらいし」
リリィは魔力の節約のため、擬態は行っていない。
そのため、受付にはこういわれる。
「その魔族はどういう経緯で連れているの?」
「フォーンディートで戦いがあって、そこで投降して来たから仲間にしたの」
レーナ姫は誤魔化すのもどうかと思ったので経緯を説明した。
「なるほど。魔族を戦力として加えたなら確かに百人力だからね」
「そうでもないわ。魔族もピンキリだし」
そう返すレーナ姫に、受付の人はいった。
「人間に近い魔族は総じて強力な傾向があるっていうし、申し分ないんじゃないかな?」
「おっしゃる通りです」
ファーラの言葉に、受付の人はいった。
「それじゃあ、部屋に案内するよ。魔族のお客さんが来ないわけじゃないし」
「サタゴニア王国に従わない野良……というのは変だけど私みたいな魔族ってことね」
そんなリリィに、受付の人はいった。
「あんたはサタゴニア王国の兵士じゃなかったのかい?」
「私は『眷属』だったからお姉さまに付き添っていただけなの」
そんなリリィに、受付の人は頷いた。
「なるほどね。そのお姉さまに眷属契約を切られたの?」
「戦争で死んで、私はその遺言に従ったの。サタゴニア王国に義理立てする理由もないし、仇討ちする気も無いから」
淡々というリリィの言葉に嘘はなさそうだったので、受付の人はいった。
「そうなんだね。とりあえず、部屋まで案内するよ」
「だって」
そんなリリィの言葉に、エリファーはこう返す。
「だったら部屋に行くよ。長居する理由もないしね」
「そうね、着いていこう」
レーナ姫がそういうと、四人は自分たちの泊まる部屋へと向かう。
そこで四人は夕食を取り、風呂に入ってから眠りに着いたのだった。




