Chapter1-58
「最後まで分からない相手だったわね……」
そんなレーナ姫に、リリィはいった。
「お姉さまは面白そうだからって理由でサタゴニア王国の一員として働いてたの」
「そうなのね。で、あなたはどうするつもりなの?」
レーナ姫の問いに、リリィは答える。
「お姉さまが力を託したあなたに着いて行くわ。自由に生きてといわれたけど、このまま行けば女郎行きよ」
「いくらあなたがサキュバスだからってそんな真似はしないわ。あなたはあくまで姉に従っていただけなんだし」
そういうレーナ姫に、リリィは返す。
「そういう意味ではなく……サキュバスの主食は精気なの。後はいわせないでください」
「つまり、大人数相手なら『そういう行為』しなくてもさっきみたいなことすればいいってことね」
リリィはレーナ姫の言葉に頷いた。
「まあ、精気を吸わなくても生きていけるんだけど。人間でいうと炭水化物を抜くような物なので」
「酷くお腹が空くってこと?」
そんなエリファーに、リリィは頷く。
「そうなのよ。だから同行させて貰えないかしら」
「いいわよ。王家の聖剣なら精気を与えることも可能だし、三人だけじゃ不安だからね」
そういうレーナ姫に、リリィはこういう。
「そういうあなたは変身魔法で女性になっている……男性といったところかしら」
「良くわかったわね」
図星だったレーナ姫……レオンハルトがリリィにそういうと、彼女はこう返す。
「サキュバスは『そういう種族』なんで分かるの。サキュバスのオーブの力を使えば別だけどね」
「いっておくけど、これは女になりたいとかそういう理由の変身じゃないからね」
そんなレーナ姫に、リリィは返す。
「戦略的な理由での変身かと思ってた」
「私は『代役』なのよ。確かにある意味では戦略的な理由といえるかもけど」
そういうレオンハルトにリリィは問いただす。
「代役?あなたがなっている子は病気なの?」
「故人よ。そうでもなければこの王家の聖剣は使えないしね」
事情を説明するレオンハルトにリリィは返した。
「そうだったの。ごめんなさい」
「いや、いいよ。とりあえず、サキュバスのオーブは王家の聖剣に込めておいて……」
そうして、レオンハルトはレーナ姫としてこういう。
「防衛戦も終わったみたいだし、砦に帰るわ」
砦にレーナ姫達が帰ると、そこに兵士がやって来る。
「魔術通信で連絡があった。どうやら、クロニカ山の敵陣を攻め落としたらしい」
「でも、帰って来るまでが防衛よね?」
そんなレーナ姫に、兵士は返した。
「いや、まだ人員は居ます。報酬を払うので、あなた達は先に進んでください」




