Chapter1-55
翌日、レーナ姫達は北門の砦に呼ばれていた。
ちなみにフォーンディートの門は東西南北の四つある。
内二つは行商も通るルートなので比較的攻められやすい。
残り二つは川に繋がっている。
川と繋がっている門は水路を兼ねているのと、山に直接出るためのルートでもある。
門の先には馬車が通れる幅があるとはいっても川であるため、そこは攻められにくいルートといえる。
レーナ姫達が居るのは攻められやすい二つの門の内の一つなのだ。
「それにしても来ないわね」
「エリファー、それは来て欲しいみたいに聞こえるわ。戦時中だから、暇なのがいいこととまではいい切れないけど」
そんなレーナ姫に、エリファーはいった。
「そうね。兵士が暇なのは平和な証拠といいたいけど、サタゴニア王国と戦争中で暇なのは何か妙としかいえないわ」
「エリファー、狼煙が見えますよ」
そんなファーラに、エリファーはいった。
「来たようね。行くわよ、二人とも!」
「分かったわ!」
そういうレーナ姫に二人は続いて外へと出る。
「数は……そこそこといったところね。あくまで本隊はクロニカ山といったところかしら」
「エリファーのいう通りですね。レッドゴブリンとハイオークが中心の部隊だから質もそれなりといえますし」
そんなファーラに、レーナ姫はいった。
「とはいえ、手薄になったといえ侮れないといった感じで差し向けて来ては居るわ」
「まあ、あんなに比べたらまだドラゴンの相手の方がキツいくらいね」
エリファーの言葉に、レーナ姫は返す。
「味方もそれなりに居るしね。まあ、行くわよ!」
こうして三人は迫ってくる敵に対峙する。
「これでどうかしら。ドラゴンファイヤー!」
まず手始めにレーナ姫の放った炎が、敵を薙ぎ払おうとする。
「ふん。バカの一つ覚えの広域……」
敵は喋れるレベルの知能があるので広域魔法対策もしっかり練っている。
だがレーナ姫のそれは詠唱の時間が殆どないため、退避が間に合ったのは範囲に入った魔物の内の三割だった。
「なっ!?詠唱短縮が可能なレベルの高位の魔法使いは全て出払っているはず……それにこの炎は!」
「ああ、間違いない。まるでドラゴンの息だ」
そんな魔物の一人(?)が炎について触れた魔物にいう。
「ドラゴンだって!?くっ、そんな化け物クラスが居るのかよ!」
「ええい、怯むな!ドラゴンを手懐けているなら姿は見えるが、それはない。恐らくドラゴンオーブの力だろう」
そんな隊長らしき魔物に魔物の一人(?)はいった。
「それでも充分化け物だっての!破れかぶれでやれっていうのか?」
「慌てるな。密集していたら蹴散らされるなら、散開して包囲すればいいだけの話だ」




