Chapter1-54
検問なしで門を通り抜けた三人は、フォーンディート城へと向かう。
「さて、着いたわね。ここがフォーンディート城でいいのかしら?」
「そうみたいですね。入りましょう」
ファーラがそういうと、三人は城の中に入る。
「兵員募集の噂を聞いてやって来ました」
「そのドレス姿……王家の人間か?」
疑い半分であるため敬語を使っていない守衛に、レーナ姫はこういう。
「私はレーナ・クロニア・シューヴェスト。シューヴェスト王国の姫です」
「なるほど。お前は『レーナ姫であってレーナ姫ではない者』だな」
そんな守衛にレーナ姫……いやレオンハルトは丁寧口調のままこう返す。
「どうして知っているんですか?」
「ラグラント王国の人間には黙っておくよういわれているが、レーナ姫が亡くなったことは伝令があった」
その言葉にレーナ姫は首をかしげる。
「何でコルレーネ王国の人間には私の事情を明かしたんでしょうか?」
「支援が必要かもしれないから、とのことだ。それに我々は口が堅い」
そういう守衛にレーナ姫は突っ込めなかった。
今は守衛を含め四人しかいないからだ。
三人は駅馬車を城の馬小屋に留めてきたが、兵士募集の旨を受けた者はもうすでに馬車を留めていた。
つまり、三人は滑り込みでやって来た形になるため事情を知らない誰かが入って来る可能性はほぼない。
あったとしても門が開くので、それと合わせて話を止めればいいだけだし。
「なるほどね。まあ、今は訳あって変身術を使っていますが」
「変身術使いなのか?」
そんな守衛に、レーナ姫は首を横に振る。
「いいえ、これは王家の聖剣に吸収させた竜のオーブの力です」
「竜のオーブ……珍しい物を持っているんだな」
あくまでも相手が姫の偽物だからか、ため口のままの守衛にレーナ姫はこういう。
「そうですね。ともかく、ここの防衛には私も加勢させて貰います」
「なるほど、王家の聖剣を継し者……その力を見せて貰います」
王家の聖剣を継ぐ者に対してだからか、ようやく敬語を使った守衛にレーナ姫はこういう。
「はい、やってみせます」
「早速ですが、兵舎ではなく宿に案内します。一時的な傭兵に兵舎の構造を知られるのは不味いですし」
そんな守衛にレーナ姫はこう返す。
「まあ、そういう危険は冒したくないですよね。今は戦争が無いとはいっても盗賊の類はありますし」
「サタゴニア王国のスパイをやる人間なんて珍しいし、警戒しているのはそのくらいです」
そういう守衛にレーナ姫はいった。
「ともかく、案内して貰います」




