Chapter1-52
山小屋のインパクトが凄かったといわんばかりのエリファーに、レーナ姫はいう。
「山という地形に沿って建物を建てたらこうなるっていうことよ」
「驚いている場合じゃないわね。小屋に入りましょう」
エリファーがそういうと、三人はフラグスの山小屋へと足を踏み入れる。
「三名様ですか?」
「はい」
料金は結構良心的だった。ストウールの宿屋とそこまで変わらないくらいだ。
「旅人が来るから安くしておける、というのもあるんでしょうけどね」
「ファーラのいう通りかもね。こういう所は結構値が張るって聞くし」
そんなレーナ姫に、エリファーはこういう。
「で、部屋はどこなの?」
「部屋はそこを曲がって左ね」
そんなレーナ姫に、エリファーはいう。
「山ギリギリにあるからか、窓に転落防止の柱がしてあるわね」
「そりゃあね。子供とかだと柱の間を抜けかねないから、同伴しないとまずそうだけど」
そんなレーナ姫に、ファーラはいう。
「レーナ姫やエリファーも成人したばかりじゃありません?」
「確かに私とエリファーは変わらないけど……」
首をかしげるレーナ姫に、ファーラはいった。
「私は18歳です」
「なるほどね」
レーナ姫は納得したようにいう。
日本でも18歳になれば成人と見なすべきという議論があったりするため、
前世の記憶のあるレオンハルトでもしっくりくる年齢だったのだ。
「何年かは王家のメイドやっているはずだから、私たちより年上だろうと思ってはいたけど」
「レーナ姫のいう通りかもしれませんね」
ちなみに、レーナ姫は生きていれば代役であるレオンハルトより年上である。
もっとも死んでから半年くらいなので、ちょうどその分が年の差になるだけだが。
「ともかく、部屋に着いたわよ」
レーナ姫がそういうと、三人は部屋に上がり食事を待つ。
そして出された料理であるローストビーフとほうれん草のスープに舌鼓を打つ。
「ほうれん草……確かコルレーネ王国の気候を生かした特産品だっけ?」
「エリファーのいう通りね。地理的に気温が低いから、ほうれん草が栽培しやすいのよ」
そんなレーナ姫に、ファーラはこう補足する。
「ほうれん草は年間通じての栽培が可能ですが、暑さには弱いという特性があります」
「つまり、トマトを栽培するような場所じゃ無理ってこと?」
そんなエリファーに、ファーラは頷いた。
「そうなります」
この世界にハウス栽培の技術は浸透しておらず、魔法で代替しようという試みもあまりされていない。
よって地域ごとに作物のバラツキがあるのだ。




