Chapter1-51
道すがらでパスタを食べた三人は、フラグスの山小屋を目指し駅馬車を走らせていた。
「それにしても、坂道が多いわね」
「エリファーがそういいたくなるのも無理はありません。ここは山の中腹といえる場所ですし」
そんなファーラに、レーナ姫はいう。
「この辺が難攻不落といわれる所以よ。旅するならともかく、戦うとなれば死角が増えるから」
「そうね。こういう地形はドラゴンのような魔物でもなければ難儀するだろうから」
エリファーの言葉に、ファーラは頷いた。
「ですね。仮にドラゴンが出ても、味方と隔離されていれば七面鳥撃ちにしやすいですし」
「幾らドラゴンでも……いやドラゴンのでかい図体はそういう時はむしろ弱点にもなるわけよ」
そんなエリファーに、レーナ姫はこういう。
「まあ、固い鱗を持っているドラゴンといえども何発も弓矢を喰らい続ければ怯むしね」
「そういう隙を付けば、急所をぶった切るのは鍛えた兵士であれば難しくなくなるわ」
エリファーの言葉に、ファーラはこう返す。
「それでも、ドラゴンは脅威に違いませんけどね。ドラゴンの吐く炎や冷気はやはり強力ですし」
「それに鋭い爪と巨大な翼だけでも十分な脅威ではあるわ」
そんなレーナ姫に、エリファーは首を傾げながらもこういった。
「私はそう感じないけど、平均的な兵士だとそうなるかしら」
「エリファーはかわせなくても剣で切り払えるものね」
そういうレーナ姫にファーラは頷く。
「いくら速くても動き続けたらスタミナが減りますもんね。速さだけでなく守りも考えないといけません」
「ところで、レーナ姫はそういうことできるの?」
エリファーの問いにレーナ姫は答える。
「炎は無消費で放てるし……羽を生やす魔力だけで空も飛べるからね。冷気も熱量を変換する魔法を使えばローコストだし」
「つくづくドラゴンオーブの力は凄いですね」
ファーラの言葉に、レーナ姫はこう釘を刺す。
「使い手の腕が足りなければどんなアイテムだって宝の持ち腐れよ。だから精進しないと」
「謙虚なのはいいことだけど、そろそろ山小屋が……」
エリファーは山小屋を見て驚く。
「山肌の上に小屋が被さっている!?」
「それがフラグスの山小屋よ。馬小屋は流石に平地だけど」
そんなレーナ姫に、エリファーはいった。
「まあ、馬の出入りをさせる必要があるしね。でも、まるで浮いているみたいね」
「ちゃんと固定されているから安全ですけどね」
そんなファーラにエリファーはこう返す。
「まあ、人が泊まるところだし。けど、インパクトでかいわ」




