Chapter1-49
ストウールに着いた三人は、そこでこんな話を聞く。
「聞いたかよ。コルレーネ王国は近々クロニカ山を攻めるんだとさ」
「クロニカ山……サタゴニア王国の野営地か。魔族に城や砦を作る発想は無いのか?」
その質問に、噂を始めた男は答える。
「あるにはあるが、作るとしたら砦だろうな。攻めるためだけに城を作るのは勿体ないと思ってるらしい」
「まあ、自然開発に怒って魔族は蜂起したんだからそんなことしたら大義名分も無くなりそうだしな」
そんなもう一人の男に、男は返す。
「まあ、魔族も全く農耕をやらんわけじゃないがな。間伐という発想も彼らにはあるらしく、定期的に木は切るしな」
「間伐の場合、やった方が森は育つというからな。まあ何にせよ、俺達遊牧民にとっちゃとんだとばっちりだ」
その会話に、エリファーはこういう。
とはいっても男に意見するわけではないが。
「で、山への攻撃は兵士を募集しているの?」
「地理に詳しくないよそ者は雇えないってさ。ただ、城を開けるんで守衛を募集しているらしい」
そういう男に、エリファーはこう続ける。
「今から駅馬車で行っても間に合うの?」
「そうだな。城塞都市フォーンディートにはここからだと速くて二日だが、攻めるのは四日後だ」
間に合わないだろう、といいたそうな男にレーナ姫はいった。
「それなら間に合うわね。速くて二日なら、何とかなるもの」
「なるほど、そういう考えもあるか。だが、今日は泊っていくならギリギリだぞ?」
そんな男にレーナ姫はいう。
「こんな夜遅くに山中を行くなんて無茶はしないわ。間違いなく遭難するし」
「そういうことよ。それじゃあ、宿に行くわ」
エリファーがそういうと、ファーラが待っている馬車に乗り込み宿へと向かう。
そして三人は宿で受付を終えると、食事を待つ。
「お待たせしましたジンギスカンです」
そういって運搬掛は去っていった。
「山脈近くで寒そうだしね。珍しい料理だけど、美味しそうね」
「レーナ姫のいう通りですね。性が付きそうです」
そんなファーラに、エリファーはこういう。
「そうね。明日からも頑張れるわ」
ジンギスカンに舌鼓を打った後、レーナ姫は変身を解いてレオンハルトに戻る。
「それにしても、城の守りか……」
「不満なんですか?」
ファーラの問いに、レオンハルトはこう答える。
「不満は無い。兵員が減った所を突かれるのは痛いだろうしな」
「なるほど。では、何故考えこんでいたのですか?」
その問いにレオンハルトはこう返す。
「重要な仕事だと思っただけだ」




