Chapter1-46
ともかく、朝食を食べ終えた三人はディーグル高地を突っ切るため馬車へと乗り込む。
そして馬車は、ディーグル高地の一番高い場所へとたどり着いた。
「ここがディーグル高地の頂上……といったところね」
そんなエリファーに、ファーラはここより高い場所を指さしてこういう。
「正確には、あそこのリクレイン山に連なる高地がディーグル高地なので頂上とは呼ばれませんけどね」
「リクレイン山は標高500m程……ここがだいたい標高350mだから、差し引き150mしかないともいえるわ」
そういうレーナ姫に、ファーラはこう続ける。
「最もリクレイン山に着くまでで150mほど降るので、登るとすれば300mになります」
「まあ、用は無いけど。ここからならリクレイン山が見えるわよね?」
そんなレーナ姫に、エリファーはいった。
「確かにいわれてみればそんな山もあるが、今までは何で見えなかったんだ?」
「リクレイン山は気候の関係で霧に包まれているのと、馬車に乗ってることで生じる視野の縮小が原因ですね」
そんなファーラに、エリファーはこういった。
「つまり、邪魔するものが多かったってことね」
「そうなるわね。とはいえ、私達はグレウードに向かっているんだから名残惜しくてもお別れよ」
すると、エリファーはこう返す。
「いや、気になっただけだよ。ともかく、降りよう」
彼女は遠くに見える町を指さしていった。
「で、あれがグレウードで間違いないかな?」
「はい。エルゲルトよりも大きいですよね?」
そんなファーラに、レーナ姫はこう答える。
「エルゲルトも通商人が居るからそれなりの大きさだけど……それよりはでかいわ」
「まあ、シューヴェシティに比べたらそうなります。遊牧民の国の中心都市ですしね」
すると、エリファーはレーナ姫にこう問いかける。
「そういえば、モングラ王国の王様はここに居ないの?」
「はい。モングラ王国の城はリクレイン山の中腹、リクレイン城にあります」
そんなファーラに、エリファーはこう返す。
「もう戦争もやってないっていうのに、不便なところに建てた物ね」
「確かに今考えればそうかもしれませんが、ざっくりいうと戦争後も平城を建てなかったからです」
ファーラの言葉に、エリファーは補足する。
「まあ遊牧民族だからね。普段はリクレイン城に住んで、集まる時にグレウードまで行けばいいって理屈よ」
「なるほど……」
納得するエリファーに、レーナ姫はこう続ける。
「といういえば聞こえはいいけど、要するに城を建てるための手間暇を惜しんだだけよ」




