Chapter1-40
「ディーグル高地?そこに目印ってあるの?」
エリファーの問いに、ファーラはこう答える。
「ディーグル高地からはグレウードが見下ろせます」
「グレウード……確かモングラ王国でも特に物資が集まる都市だっけ?」
そんなレーナ姫に、ファーラはこう返す。
「ですね。なので、ディーグル高地から見れば一発で分かります」
「それにしても……この身体って中々慣れないのよね」
第三者は誰も聞いていないためか、レーナ姫は二人にこういった。
「そりゃ……変身魔法の類だからね。しかも、見破ることも困難よ」
「エリファーのいう通りですね。変身魔法には独特の魔力があるので、見破ることはできます」
そんなファーラに、レーナ姫はこう突っ込む。
「男が女になっているから違和感がある、って思わないの!?」
だが、ファーラはこう切り返す。
「世の中には、ドラゴンに変身する魔法もあるんです。それに比べればどうということはありませんよ」
「それをいわれればぐうの音も出ないけど……変身アイテムの類も使ったことは無いのよ?」
一応女性口調のままでそういうレーナ姫に、エリファーはこういう。
「なら男口調で愚痴ればいいのに」
「立ち止まってはいられない、からこそ口調を変えているのよ」
レーナ姫はそういいつつも、こう続ける。
「とはいって、男と女じゃ勝手が違いすぎる。それだけは分かってくれ」
ファーラは頷きながらもこういった。
「そういう魔法も世の中には存在しますけどね」
「魔法って便利なのね……」
思わずこういうレーナ姫に、エリファーはこう返す。
「まあ、魔法使いじゃない人にとってみればそうかもしれないわ。かくいう私も魔法は使わないけど」
この世界の住民はその気になれば魔法が使える。
とはいえ訓練が必要なので肉体の鍛錬と魔法の鍛錬を両方行い、なおかつどちらも実戦クラスで行える者は非常に少ない。
レオンハルトは王家の聖剣により魔法を使うことも可能であるが、それは王家の聖剣の力があってこそである。
変身魔法はそこまでポピュラーな物でないのと、使用中に魔力を消費し続けることが多いので彼は使おうと思っていなかった。
ちなみに、ドラゴンオーブの力による変身はドラゴンへの変化同様適応化なので魔力消費が変身時のみとなる。
最もそこまでの変身魔法を使えること自体が稀であるため、王家の聖剣をもってしても難しかったのだ。
話を戻すとそんなエリファーに、ファーラはこう返す。
「いうほど魔法も万能じゃありませんよ。何より、死者の蘇生はできませんからね」




