Chapter1-4
「そんなことくらい分かっています。手ほどきをします」
「分かった」
そういってレオンハルトは手ほどきを受けつつドレスに着換える。
「しかしコルセットってきついんだな……」
「あまり鍛えてないのですね」
レオンハルトは騎士にしては華奢だったので、ファーラはそういう。
「そう思うなら触ってみたらどうだ?」
「破廉恥だと思ったので触らないようにしてましたが……」
そう前置きした上で、ファーラはレオンハルトの腕に触れる。
「なるほど。あまりごつくならないようにしているんですね」
「そういう『いかにも鍛えてます』って感じにするのは顔に似合わないとかいわれそうでな」
「ごつくなって見返そうとは思われませんでしたか?」
ファーラの疑問にレオンハルトは返す。
「確かに弄りはあった。笑い者にされたわけでもないから、見返そうとかそういう気持ちはないけど」
「そうなんですね」
「嫌がっている奴を弄るならともかく、多少の弄りなら円滑なコミュニケーションを促す物でもあるわけだし」
もっとも、とレオンハルトは続ける。
「嫌だというのを表に出せない奴も居るから、その辺はしっかりと見極めないとな」
「ともかく、着換えを続けますよ」
というわけで、レオンハルトはドレスに身を包んでいた。
「思ったより装飾が少なくて良かった。これなら上手く動けそうだからな」
「それは外征用のドレスですからね。動きやすさを重視し、装飾は抑えてあります」
「ところで、ティアラはそこにあるけど王家の聖剣はどうしたんだ?」
そんなレオンハルトにファーラは答える。
「王家の聖剣はそこにありますよ」
彼女が指さした先は姫の化粧箱だった。
開けてみると、そこには化粧品類しか無かった。
「俺を嵌めた、訳じゃないだろ?どのみち化粧は必要だろうし」
「ええ、その鏡の中に封印しているんです」
「つまり、この鏡は魔鏡なのか」
そんなレオンハルトにファーラは頷く。
魔鏡は中に物質を閉じ込めておくことができる物だが、封じ込めるのは所有者の物に限るという制約がある。
取り出せる者がいない場合は勝手に取り出されるので、今の場合は近親者に指定しているようだ。
「着換えの時手に取るだろう化粧鏡を、姫は病床で魔鏡にするよう頼んでいたのです」
「なるほど。結構頭が回るんだな」
そんなレオンハルトにファーラはいう。
「ともかく、化粧をしましょうね」
そういってレオンハルトは手ほどきを受けながら化粧をしていく。
それを鏡で見たとき、レオンハルトは思わずこういった。
「これが俺?」




