Chapter1-34
「駅馬車で寝るのはいいわ。けど、その間あなたが起きてるの?」
そのエリファーの問いには、レーナ姫が答える。
「結界魔法を張っておくわ。王家の聖剣……エクスカリバーならそれができるし」
「そういや王家の聖剣に名前は無いけど、『エクスカリバー』ってのは小説の影響?」
そんなエリファーの問いに、レーナ姫はこう返す。
「まあ、そんな物だと思っていいわ」
レーナ姫もといレオンハルトがエクスカリバーの由来としたのは当然ながらアーサー王伝説だが、
彼がそれを知るきっかけはあるソーシャルゲームだったらしい。
でなければ中学生の彼がアーサー王伝説なんて知ることはほとんどないだろう。
そういうのが好きな中学生なら知ることもあるだろうけど。
ともかく話を戻すと、エリファーはエクスカリバーの由来に納得したようであった。
その証拠とはいわないが、彼女はこういった。
「そうね。まあ、そういうのは好き好きだと思うし」
そして彼女達がエルゲルトに着くと、そこではこんな話があった。
「最近東の丘でドラゴンを見たんだって?」
「そうなんだ。近づいたら炎を履かれて……とてもじゃないが調査できない」
そんな住民にレーナ姫はこう問いかける。
「東の丘?」
「ああ、この辺は草原が主だが、高低差がないわけじゃないんだ。というより、丘の先にある山は国境だしな」
そんな住民にファーラは反応する。
「その山はシューベスト王国との国境ですね。砦が山に囲まれたのは見ましたよね?」
「なだらかな丘の先に山がある、といったところね」
そんなレーナ姫に、エリファーはこういった。
「詳しいわね。私はそこまで興味なかったわ」
「まあ、国境なんて普通に暮らしてて意識することはないからね」
そう返すレーナ姫に、ファーラはこう続ける。
「とはいえ、ドラゴンですか。調査してきていいですか?」
「そうだな。ドラゴンは今のところ人里に降りては来てないから、人間に危害を加えるつもりがあるか調べてほしい」
そんな住民に、レーナ姫はこう答える。
「ファーラ、道は覚えられますか?私は調査しに行くわ、情けは人の為ならずだし」
「そうですね。ドラゴンの調査なら、それなりの何かがあるはずです」
そんなファーラにエリファーはこう続ける。
「私も伊達や酔狂でドラゴンスレイヤーと呼ばれるわけじゃないってことを見せてあげるわ」
「頼もしいわね、エリファー。誰か同行して貰えるかしら?」
そんなレーナ姫に住民の一人がこういった。
「それじゃあ、前金替わりにただで案内する。何、馬車の見守りくらいはできるさ」




