Chapter1-32
「まあ、これだけの物を振るえる魔物はこの辺だと少ないものね」
そんなエリファーに、窓口の受付の人はこういった。
「これだけの魔物なら間違いなく統領だろう。約束のお金だよ」
そういって窓口の人はエリファーの眼前にお金を見せる。
「ところで、これはお金に換えるかい?」
「半分ほどは持って行かせてもらうわ」
そんなエリファーに、窓口の人はこういう。
「なら、このくらいだね」
さらにお金が追加され、エリファーはそれを受けとる。
「これだけあれば今晩の宿泊費を出してもおつりが出そうね」
「エリファーのいう通りね。早速馬車留めに戻るわよ」
二人は馬車留めに戻ると、ファーラと合流し砦へと向かう。
そして、砦の入り口でエリファーは窓口へ現金を先払いする。
「上級ルームでお願いするわ」
「かしこまりました」
この宿の部屋は最上級、上級、一般に分かれている。
最上級は食事も豪華だが、上級と一般はさほど変わらない。
一般の場合は一階なので旅人向けであり、また上級ならサービスドリンクが出る。
ワインや地酒もあるが、このメンバーは誰も酒を飲まない。
そのためそこそこ上質な紅茶か、モングラ王国の牛乳になる。
三人は紅茶を選び、それを夕食と一緒に飲むことになる。
ともかく、仮にも王家の人間が泊まるのであれば上級だろう。
式典で国内を回るなら最上級だろうが、長旅なのでそういう訳にもいかないのだ。
「さて、これで少しは寛げるかしら」
「レーナ姫のいう通りですね」
そんなファーラに、エリファーは頷きながらこういった。
「元が砦だっただけに、かなり頑丈みたいだしね」
「兵士が寝泊まりする場所だったから、環境も整えられているしね」
レーナ姫がそういってるタイミングに、夕食が来る。
「モングラ牛のチーズピザとトマトスープです。上級紅茶もどうぞ」
そういって運んできた人は下がっていった。
「美味しそう……」
「そうね。チーズを全面に出してる分、色んなチーズが使われてるし」
レーナ姫の言葉に頷きながら、エリファーはそういった。
そんなエリファーに、レーナ姫はこう返す。
「チーズの種類も色々あるんだけど、流石に名前は覚えて無いわね」
「そういう知識は無くてもチーズの種類を把握していれば大丈夫ですよ」
ファーラも名前を空でいえるほどではないようだった。
「トマトスープも美味しいしね」
レーナ姫がそういい、三人は食べ進める。
夕食を食べ終えると、レーナ姫はエリファーにこういう。
「着替えるから、あっち向いててね」




